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エロいウサギの”アレ”で深まった、おっさん同士の絆。2023年の新たなはじまり

ossan2-2おっさんは二度死ぬ 2ndシーズン

ウサギのウンコ

 それはひどく恥ずかしいものだったかもしれないし、誇らしくもあったかもしれない。少なくともその事象に関しては複雑な感情を持ち合わせていた。  もうどれくらい前だったか忘れてしまったが、おそらくスマホなどが一般に普及しだしてきたころだったと思う。とある匿名掲示板に半角文字列というカテゴリがあり、日々、多くのサムライがエロい半角文字列を交換するという場所があった。今は亡き「半角文字列板」、今回の舞台はここである。  エロい動画交換みたいなスレッドだったと思う。そのスレッドにはそれだけの文言で誘引された熱きサムライどもが集まっていた。早い話が「分かっている」やつが集まっていたのである。  半角文字列で取り交わされるエロ画像やエロ動画の多くは、作られたものが多かった。エロ本やエロ動画として作られ、流通しているものだった。それらの中から自分に刺さったものをアップロードし、そのURLを張り付けていたのである。  ただ、そのスレッドには、そういった作られたエロでは満足しない猛者どもが集まっていた。誰かが個人的に撮影し、アップロードしたエロを好んだ。いわゆる「素人もの」である。  素人ものは作られたエロに比べて画質やアングル、全体的な質が良くないことが多かった。けれども、なんともいえない臨場感みたいなものがあった。「もう、絶対に消してよね」と言いながら渋々と撮影に応じる手ブレバリバリの映像、猛者どもはそれを何よりも好んだ。まるでこの世の秘密を覗き込んだかのような感覚があったのだ。 「5分で消す」  そういって貼られるURLにはなによりの信憑性があったし、ちょっとかっこよかった。本当に自分が撮影したプライベートのエロであり、あまりに長く貼ったままにしておくと個人特定などの面で危険だ、だから5分で消すから早くダウンロードしろよ、というものだ。そこまでしてアップロードされるエロ、そこには全幅の信頼があった。 「だからさあ、ずっと掲示板に張り付いてなきゃいけないわけよ」  徳さんは生ビールを飲みながらそんな話をしだした。僕はそれに驚きを隠せなかった。

5分で消される掲示板の画像の謎とは

 ひょんなことから、今は亡き半角文字列板の話になり、さらには、その素人ものが貼られていたスレッドの話になった。話を聞くに、僕と徳さんはまったく同じスレッドに常駐していたようなのだ。まだお互いにその存在を知りもしない時から同じスレッドでシコシコと同じURLを踏み続けていたのである。その二人がこうして八王子の居酒屋で酒を酌み交わしている。世の中どれだけ狭いのか。これがエロい掲示板でなければ何らかの映画の題材になりそうなくらいのお話だ。 「そうなんですよ。本当に5分で消されるから常にスレッドを見てなきゃいけないんですよ」  僕がやや興奮して反応する。 「そうそう、どれどれいただきますかとURLをクリックしてもう消されているときの悲しさ」 「すげえ、こんなのアップロードしていいのかよ、とか反応が続いているときの悲しさ」 「ごちそうさまでした。最高でした、とかな」 「プライドをかなぐり捨てて“再アップお願いします”と書き込むモブ」 「それでも再アップはされない」 「5分の間に落とすことができた住民たちの選民意識」 「だから張り付かなきゃならない」(二人が声を合わせて)  僕と徳さんは思い出がシンクロするあまり卒業式の掛け合いみたいになっていた。
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エロ動画を逆手に取った犯行
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テキストサイト管理人。初代管理サイト「Numeri」で発表した悪質業者や援助交際女子高生と対峙する「対決シリーズ」が話題となり、以降さまざまな媒体に寄稿。発表する記事のほとんどで伝説的バズを生み出す。本連載と同名の処女作「おっさんは二度死ぬ」(扶桑社刊)が発売中。3月28日に、自身の文章術を綴った「文章で伝えるときにいちばん大切なものは、感情である 読みたくなる文章の書き方29の掟(アスコム)」が発売。twitter(@pato_numeri

pato「おっさんは二度死ぬ」

“全てのおっさんは、いつか二度死ぬ。それは避けようのないことだ"――


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