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エロいウサギの”アレ”で深まった、おっさん同士の絆。2023年の新たなはじまり

エロ動画を逆手に取った犯行

無題605

イラスト:nicoken

「いやあ、やっぱ気が合うな。俺とお前は親友だよ。心の友だよ」  まだ知り合う前から時空を超えて同じ場所にいて同じことをしていた、その事実に徳さんはいたくご機嫌だった。ビールジョッキを傾けながらさらに続ける。 「俺がスロットになったら復活演出はお前だからな。“徳さーん”って叫びながらお前がカットインしてきて俺が復活する」  徳さんはスロットにならないし、僕も“徳さーん”なんて叫ばない。だいたい、なにからの復活演出なのか、何と戦っているんだ。とにかく謎なのだけど、まあ、北斗の拳におけるユリアなどのポジションだということを言いたいのだろう。それくらい徳さんからの僕への信頼は厚かった。  ただ、ひとつだけ懸念事項がっあった。同じ場所にいた僕と徳さん、その同じ場所で同じく猛威を奮った現象があった。 「5分で消す」  といってアップロードされたエロ動画、これが信頼が厚いことはもうすでに述べた。しかしながら、それが行き過ぎると今度はそれを逆手に取った犯行が増加するのである。 「5分で消す」  そういってアップロードされたURLをクリックし、動画をダウンロードするとウサギがポロポロとウンコをしている動画が延々と流される事態が続いた。すごいエロだぞと喜び勇んでダウンロードしたのにウサギのウンコである。早い話が騙されたというやつだ。

悪戯に騒ぐ掲示板の住人たち

 ただ、そこにいる住人は猛者であり紳士であった。それでいて“わかっているやつ”だったので「騙されたー!ウサギのウンコじゃねえか」などと騒ぎ立てるやつは一人もいなかった。 「おいおい、こんなエッチなのアップロードしていいのかよ。それにかわいい」 「めちゃくちゃ色白の子、まだ若いかな。つぶらな瞳がかわいい。それがこんなとこまで見せちゃうのか、時代だねえ」 「排泄ものはあまり好きじゃなかったけどこれは認めざるをえない」  こんなレスポンスが続く。嘘は言っていないけどウサギのウンコをエロいものと思わされる意図がある。早い話が、自分以外にも騙されて欲しいという意思の表れだ。  これが面白かったらしく、当該のスレッドは一気にウサギの動画で溢れた。素人ものエロ動画の倍近いウサギ動画が貼られるようになり、ウサギ動画を求めてやってくるやつまで出てくるようになった。早い話が、紳士たちが好みのエロ動画を交換し合う社交場スレッドをウサギのウンコが潰した形になってしまったのだ。 「あんなに良いスレッドだったのに、今日も張り付いちゃうぞってアクセスしたらウサギの動画ばかりになっていた」  徳さんの言葉が僕の心を締め付けた。やはり徳さんは知っている。 「調べてみると悪ノリでウサギのウンコを貼ったやつがいて、それが盛り上がったらしい。俺はその最初に貼ったやつを許さない。見つけ出して殺してやる。俺の憩いのスレッドを潰しやがって」  徳さんが言葉を震わせる。その言葉に僕は押し黙ってしまった。何を隠そう、最初にウサギのウンコを貼ったのは僕だったからだ。
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いきり立つ徳さんの勢いは止まらない
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テキストサイト管理人。初代管理サイト「Numeri」で発表した悪質業者や援助交際女子高生と対峙する「対決シリーズ」が話題となり、以降さまざまな媒体に寄稿。発表する記事のほとんどで伝説的バズを生み出す。本連載と同名の処女作「おっさんは二度死ぬ」(扶桑社刊)が発売中。3月28日に、自身の文章術を綴った「文章で伝えるときにいちばん大切なものは、感情である 読みたくなる文章の書き方29の掟(アスコム)」が発売。twitter(@pato_numeri

pato「おっさんは二度死ぬ」

“全てのおっさんは、いつか二度死ぬ。それは避けようのないことだ"――


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