更新日:2023年02月22日 07:26
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「MARCH受験は甘くない」国立狙いの受験生が“滑り止まらない”ワケ 井川意高×藤沢数希

親の経済力により広がる教育格差

藤沢数希

藤沢数希氏

――早慶やMARCHなどは人気ですが、私立大学はやはり学費が高くなります。学費と日本の教育について、どのようにお考えですか? 藤沢:日本は格の高い大学ほど学費が安くなっていきます。たとえば私立大学では格の高い慶応大学なんかは中堅私大より安いですし、もっと格の高い東大や京大は国立なのでさらに学費が安くなる。しかし、こうした格が高く学費が安い国立大学の椅子は、やはり私立の中高一貫校の生徒たちが多数取っていきます。つまり、教育にお金をかけられる裕福な家庭ほど、逆に大学では学費が安くなるという恩恵を受けやすい。一方、裕福でない家庭の子供が中堅以下の私立大学に行っているという現状があります。 井川:親の経済状況によって、教育格差が生まれてしまうということですね。 藤沢:日本は公立中学や公立高校の教育もしっかりしているわけで、実際にほとんどお金をかけずに自分で参考書を勉強して東大に入ってくる人は毎年いくらでもいる。そういう意味で、日本は諸外国よりは逆転しやすい教育制度だとは思います。しかし、やはり、トップ校以外の公立高校から国立大学に行くことは難しい。それならそれで、高卒で働けばいいんだけど、やはり大卒の方がいいということで、なんだかんだで大学進学率は年々高まっています。 井川:今の時代、せめて子供には大学くらい出させてあげたいと思うのが親心ですね。でも、奨学金を借りて無理して大学に入って卒業したはいいものの、社会人になってからはその借金を背負わされてしまう。今返済している人の中には1.5%前後の固定金利の人もいますからね。この低金利の時代に暴利です。

授業料の無償化は実現するのか?

藤沢:今は、良くも悪くも、昔より大学の単位の認定が厳しくなっているんですよ。昔と違って出席やレポートやテストの採点も厳しい。僕たちの時代はアルバイトをして学費を自分で払っている学生はそれなりにいましたが、今そんなことをしていたら、留年・中退コースまっしぐら。せっかく頑張って勉強して、たくさんお金も払って大学に来たのに、卒業できない。日本は教育ローンのことを「奨学金」と言うわけですが、アルバイトで学業がおろそかになるなら潔く教育ローンで借金して卒業したほうがいいと僕は思いますね。 井川:私はやっぱり、大学の授業料は無料にするべきだと思っています。日本には年収300万円世帯が4割弱もいると問題になっているなかで、子供ひとり私立大学に行かせるのに年収の半分の150万円もかかるというのはあまりに酷すぎる。それでは少子化にもなるって話ですよ。 藤沢:ただ、無料にした分の大学の運営費はどこから来るのかというと、税金になってくるわけですよね。そうしたら、金銭的な事情で子供を大学に行かせられない高卒で働いて税金を払っている世帯が、どうして裕福な家の子供の大学教育のためにお金を出さなきゃいけないんだってことになってしまうので、まあ、難しい問題ですね。井川さんなんか典型的ですけど、日本有数の金持ちの家なのに、国立の筑駒→東大と学費はタダみたいなものでしたね。 井川:北欧なんかでは授業料を無料にしていますね。 藤沢:そうですね。その分、北欧は税金が高いです。あと、ドイツなんかもほぼ無料なんですが、ドイツでは子供の頃の成績で、途中から大学へ進学するエリートコースと、職業訓練校に行く職人コースに振り分けられちゃったりしますね。シンガポールも低年齢での選抜が行われていると聞きます。 井川:完ぺきな教育制度の国なんてないんですね。 井川意高 1964年、京都府生まれ。東京大学法学部卒業後、1987年に大王製紙に入社。2007年6月、大王製紙代表取締役社長に就任、2011年6~9月に同会長を務める。社長・会長を務めていた2010年から2011年にかけて、シンガポールやマカオにおけるカジノでの使用目的で子会社から総額約106億8000万円を借り入れていた事実が発覚、2011年11月、会社法違反(特別背任)の容疑で東京地検特捜部に逮捕される。懲役4年の実刑判決が確定し、2013年10月から2016年12月まで3年2カ月間服役した。著書に累計15万部のベストセラーとなった『熔ける 大王製紙前会長 井川意高の懺悔録』(双葉社、のちに幻冬舎文庫)や『熔ける 再び そして会社も失った』 (幻冬舎単行本)のほか、堀江貴文氏との共著『東大から刑務所へ』(幻冬舎新書)がある。 ツイッターは@mototaka728 藤沢数希 外資系金融機関を経て、作家。メルマガ「金融日記」管理人。最新刊『コスパで考える学歴攻略法』(新潮社)が発売中。ほかに『外資系金融の終わり──年収5000万円トレーダーの悩ましき日々』(ダイヤモンド社)、『損する結婚 儲かる離婚』(新潮社)など著書多数。 ツイッターは@kazu_fujisawa
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