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バイカーの約8割がおっさんであるという衝撃の事実。もはや共通言語だ

おっさん同士、バイクの話で盛り上がる

motorbike-g684509231_1280「ええ、そうです。さいきん納車されたばかりで」 「いいねえ、いいねえ、クロスカブいいねえ」  舐めまわすように僕の愛機を吟味する。ここまで褒められると悪い気はしない。 「俺もバイク乗っているんだけどさ、セカンドバイクとしてクロスカブを乗りたいって考えてたのよ」 「いいですねえ。でも、クロスカブを含むカブシリーズは在庫がぜんぜん足りなくてなかなか納車されないらしいですよ。僕のはたまたま運が良かったみたいです」 「へえ、そうなんだ」  普通、コンビニで知らないおっさんに話しかけないし、ここまで長いこと会話したりはしない。バイクを介して新たなおっさん同士のコミュニケーションが発生しているのだ。まさにバイクはおっさんの共通言語だ。 「俺のバイクも見る?」  別にあまり興味はなかったけど、この流れで「見ない」と言える人はいない。コンビニの脇にはけっこうどでかいバイクが停めてあった。たぶん外国製の輸入車だと思う。見るからに高級そうな雰囲気がプンプンするバイクだった。

バイクのおかげであっさりと打ち解けてしまった

「すごいバイクですね」 「もうこれが最高なのよ。もう俺の息子みたいなものよ。俺の人生、これしかない」  愛機を眺めながらうっとりとするおっさん。自分のバイクを息子とまで評した。人生とまで言い切った。普通、知らない人にここまで赤裸々に心情を吐露しない。バイクを介するとおっさんの心の壁みたいなものが容易に消失するのだ。 「そうだ。これからバイク仲間のところに行くんだけど、オタクもどう?」  いきなりバイク仲間の集いに誘われてしまった。バイクってほんとすごいな。僕は多くのおっさん友達がいるけど、おっさんは本質的な部分で心を開くのに時間がかかる。照れくささからなのか、いきなり心を開いたりしない。けれども、バイクを介するとあっけないほど簡単に攻略できるのだ。おっさんを攻略して仲良くなりたい人はバイクを使うべきだ。まあ、率先しておっさんを攻略したい人もなかなかいないだろうけど。  大型輸入バイクと僕のクロスバイクが列をなして走っていく。おっさんのいうバイク仲間が集まる場所は10分ほど移動した先のガレージだった。大きな一軒家の横にガレージがあり、そこにバイク好きのおっさんどもが集まる感じだった。高級そうなバイクがズラッと居並んでいて、6人ほどのおっさんがいた。 「お、クロスカブいいね」 「この色がいいんだよな」 「カブシリーズの1速のエンブレやばいよな。怖いくらい。前に乗った時に死にかけた」  僕のクロスカブを取り囲んでバイク談議に華が咲く。みんなバイクが好きなのである。っていうか、なんでおっさんってバイクを眺めながら語るとき、みんなラーメン屋の店主みたいになるんだ。そういう決まりでもあるのか。
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若い頃と違って、生活に余裕ができて……というのがバイクにハマる一番の理由らしい
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テキストサイト管理人。初代管理サイト「Numeri」で発表した悪質業者や援助交際女子高生と対峙する「対決シリーズ」が話題となり、以降さまざまな媒体に寄稿。発表する記事のほとんどで伝説的バズを生み出す。本連載と同名の処女作「おっさんは二度死ぬ」(扶桑社刊)が発売中。3月28日に、自身の文章術を綴った「文章で伝えるときにいちばん大切なものは、感情である 読みたくなる文章の書き方29の掟(アスコム)」が発売。twitter(@pato_numeri

pato「おっさんは二度死ぬ」

“全てのおっさんは、いつか二度死ぬ。それは避けようのないことだ"――


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