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「おっさんは花粉症にならない」は本当か。耳鼻科で繰り広げられたとある“賭け”

おっさんは二度死ぬ 2ndシーズン

おっさんは花粉症にならない

 今年は花粉の飛散量がすさまじいらしく、かなり深刻な花粉症に悩まされている。僕の場合は鼻水がジュルジュルでるだけでなく、目も痛いし喉も痒いし、おまけに副鼻腔炎まで併発するようで、重度の頭痛までついてくる。端的に言うと地獄の日々だ。  僕自身は2年前から花粉症の仲間入りを果たした。2年前のこの時期、あまりに鼻水が出るので耳鼻科を受診したところ花粉症と診断された。ついでに「頭痛もするだろ?」といわれ、副鼻腔炎も併発していることも指摘された。あまりの鼻水に薄々は花粉症かなあと考えていたけど、頭痛は花粉症とは無関係だと考えていたので、この頭痛すらも花粉症か、貴様! と花粉に対して激しい怒りを感じたのを今でも覚えている。  いちおう、副鼻腔炎であることを確定させるためにレントゲンやらなにやら色々と診察されたのだけど、その際にシュッシュッと何かを鼻に噴霧された。それが引き金となり決壊したダムのごとく鼻水が溢れてきた。これはレントゲンを撮っているときも同じで、頭部を固定してゴソゴソやってる時もとめどなく鼻水が溢れてきて、レントゲンにこのボリショイサーカスみたいになった鼻水が写るんじゃないかと心配したほどだ。  待合室に戻っても鼻水が止まらず、あのシュッシュッとやったやつはなんなのか、自分の体に何をされたのか。 「俺に……何した?」  耳鼻科の待合室、一人で勝手にキルアになりながら、鼻水をジュルジュルしたのも良い思い出だ。

「花粉症は繊細な人がなる」という都市伝説

 さて、こうして2年前に晴れて花粉症の仲間入りをした僕だけれども、実はそれ以前から花粉症の症状は現れていた。たぶん、10年くらい前から花粉症だったのだと思う。2月から3月にかけての時期にやけに鼻水が出るし、喉が痒い、口内の上の面みたいな場所が痒い、そして頭痛もする。そんな状態が続いていたけど、まあ軽い風邪かな、みたいに8年もの間、花粉症であることを認めなかった。  もちろん、症状が軽かったこともあるけど、そこには「おっさんが花粉症になるはずがない」という確固たる信念みたいなものがあった。「野武士のような俺が花粉症になるはずがない」という自信みたいなものだったとも思う。  なにがどうなったらそういう考えに至るのか今でも理解できないのだけど、どうやら当時の僕は「花粉症は繊細な感じの人がなる」というイメージを抱いたらしく、自分のような豪快な野武士が花粉症であってはならないと考えていたのだ。もちろん、そんなことはなく、どんなに豪快で野武士のような人物であってもなるときは花粉症になる。  実はこういう考えを持ったおっさんは一定数いる。それは「おっさんは花粉症にならない」という確固たる信念なのか「自分が花粉症になるはずがない」という自信なのかわからないけど、花粉症であることを頑なに認めないおっさん勢力は確かに存在するのだ。  僕の友人のマサさんもそんなおっさんの一人だった。鼻水をジュルジュル出して目も真っ赤にしているので「それたぶん花粉症だよ」と指摘しても「そんなはずはない、おれおっさんだぜ」と頑として認めなかった。なんどとなく「花粉症だよ」と指摘しているのに、彼は一向に認めなかった。どれだけ薦めても耳鼻科を受診しようとはしなかった。彼はいまだに花粉の季節になると謎の症状に悩まされている。  さて、花粉症を受け入れた僕は毎年、花粉症の症状が出始めると耳鼻科に行くのが恒例となっている。そこでなんとか症状を抑える薬を出してもらいこの季節を乗り越えるのだ。
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花粉症でごったがえしていた耳鼻科の外来に来た、おっさん
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テキストサイト管理人。初代管理サイト「Numeri」で発表した悪質業者や援助交際女子高生と対峙する「対決シリーズ」が話題となり、以降さまざまな媒体に寄稿。発表する記事のほとんどで伝説的バズを生み出す。本連載と同名の処女作「おっさんは二度死ぬ」(扶桑社刊)が発売中。3月28日に、自身の文章術を綴った「文章で伝えるときにいちばん大切なものは、感情である 読みたくなる文章の書き方29の掟(アスコム)」が発売。twitter(@pato_numeri

pato「おっさんは二度死ぬ」

“全てのおっさんは、いつか二度死ぬ。それは避けようのないことだ"――


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