エンタメ

おっさんが自暴自棄になったときに繰り出す「おっさんカオス」とは何か

馬場さんがデリヘルで犯した失敗

nosesan59_8_TP_V その日、大の風俗好きである馬場さんは、贔屓にしているデリヘル店で新人の女のコを呼んだ。女のコはまあまあかわいかったそうだが何かひっかかるものがあった。 「俺くらいの風俗猛者になると女の子がかわいくてもテンションは上がらない。平然としたものよ」  何のアピールなのか分からないけど馬場さんは自信たっぷりにそう言った。 「すいません、なんて呼んだらいいですか?」  女の子は横に座り、甘えた声で馬場さんにそう問いかけた。そこで馬場さんが確信する。 「おれ、このコ、呼んだことあるわ」  この店で呼んだのか、それとも別の店で呼んで、その後この店に移籍してきたのか分からないけど、確かに女のコには見覚えがあったし、前もそう質問されたのだ。女のコは気づいていない感じだったけど馬場さんは確信していた。

風俗嬢の「なんて呼んだらいいですか?」に込められた意味

「気付かずに同じ女のコを2度呼んでしまった、それは俺の風俗人生で最大の失敗」  馬場さんが落胆する。馬場さんは風俗において一期一会の精神を尊重しており、同じ女のコを呼ぶときはすごく気に入っただとかそういった重大な理由を伴って呼んでいた。それがこんなことになってしまうなんて落胆が大きかったという。 「なんて呼んだらいいですかー?」  そうとは知らずに女のコは甘えた声で馬場さんに迫る。実は馬場さん、風俗店でよく使われるこの質問が大嫌いだ。 「あの下の名前をきいてくるやつあるじゃん。それでプレイ中はずっと“こうくん”とか呼んで恋人気分を演出してくるの」 「いいことじゃないですか。プロ根性の接客術ですよ」  僕の言葉に馬場さんは首を横に振る。 「そういう側面もあるけどそうじゃない側面もある」
次のページ
逡巡の末、馬場さんが繰り出したおっさんカオスとは
1
2
3
テキストサイト管理人。初代管理サイト「Numeri」で発表した悪質業者や援助交際女子高生と対峙する「対決シリーズ」が話題となり、以降さまざまな媒体に寄稿。発表する記事のほとんどで伝説的バズを生み出す。本連載と同名の処女作「おっさんは二度死ぬ」(扶桑社刊)が発売中。3月28日に、自身の文章術を綴った「文章で伝えるときにいちばん大切なものは、感情である 読みたくなる文章の書き方29の掟(アスコム)」が発売。twitter(@pato_numeri

pato「おっさんは二度死ぬ」

“全てのおっさんは、いつか二度死ぬ。それは避けようのないことだ"――


記事一覧へ
おすすめ記事