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“中学時代の謎の風習”は、おっさんたちが必ず盛り上がる鉄板トークだった

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中学時代の謎の風習

 おっさんたちが数人くらい集まると必ず盛り上がる話がある。それが「中学時代の謎の風習」についてだ。これを語り合うとまあ、おっさんたちは盛り上がる。この話題を肴に3時間くらいは酒を飲めてしまうほどなのだ。  なぜこれほどまでに盛り上がるのか。それは心と記憶のバランスがちょうどいい世代、多感な年代という時期に中学時代が該当するのだろう。それでいて学校という閉鎖的な世界、小学校よりいくぶん自由な雰囲気、性への目覚め、それらが複雑に絡み合って「謎の風習」という奇妙な土台を作り上げているのではないだろうか。  僕らロスジェネ世代のおっさんにとって、それらを語り合うことは、なんだか自分の基礎の部分を正直に曝け出している感覚があるのだ。それらで盛り上がり、笑ってもらえることで自分の中のもっともピュアな部分を認めてもらったような感覚すら覚えるものなのだ。 「じゃあ僕から行きましょう」  完全に中学時代の風習エピソードを披露する流れなので、さっそく僕のエピソードを披露する。なぜ先頭バッターを買って出たかというと、うちの中学は比較的にまともでそこまで狂気じみた風習はなかったからだ。

好きな人のハチマキをもらうという風習

「うちはけっこう普通ですよ。体育祭のハチマキがいちばん盛り上がるっていう風習があったんですよ」  我が中学は、クラスでお揃いのハチマキを作って体育祭に臨むという風習ができあがっていた。そして、閉会式が終わったあとの、まだ熱気と砂煙が残るグラウンドで好きな人のハチマキを貰うという風習があった。別に狂気的でもなんでもない、どこの中学でもありそうなものだ。  ただまあ、僕は現代で言うところのチー牛だったので、3年間を通算して一度もそういったハチマキに関する色恋沙汰はなかった。ただ、ハチマキを持ったまま帰宅するとその風習のことを知っていた母親が、心の底からがっかりした表情を見せるので、帰り道に川に流していた。ひとり白線流し状態だ。 「ただ、その体育祭ではハチマキを巡る色恋沙汰のエトセトラはなかったんですけど、その前の段階であったんです」  そのハチマキは生徒の手で作ることになっていたので、その年のクラスのカラーを決め、金を徴収し、布を買いに行く係が必要だった。その係に僕が抜擢されたのだ。そして、同時に女子サイドから抜擢されたハチマキ係が、好きな女のコだった。  色めきだった。なぜなら、ハチマキ係はクラスの皆で決めた色の布を買いに行かなければならないからだ。とはいっても故郷の田舎町にはそのような布を売っている店がない。自動的にやや都会の隣の市まで列車に乗って行かねばならないことになっていた。好きなコと、列車に乗って、やや都会で、お買い物、これはもうデートだろ。ちょっと進展とかありえてもおかしくないシチュエーションだろ。
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せっかくのハチマキ買いの日をアレのせいで台無しにした僕
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テキストサイト管理人。初代管理サイト「Numeri」で発表した悪質業者や援助交際女子高生と対峙する「対決シリーズ」が話題となり、以降さまざまな媒体に寄稿。発表する記事のほとんどで伝説的バズを生み出す。本連載と同名の処女作「おっさんは二度死ぬ」(扶桑社刊)が発売中。3月28日に、自身の文章術を綴った「文章で伝えるときにいちばん大切なものは、感情である 読みたくなる文章の書き方29の掟(アスコム)」が発売。twitter(@pato_numeri

pato「おっさんは二度死ぬ」

“全てのおっさんは、いつか二度死ぬ。それは避けようのないことだ"――


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