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“中学時代の謎の風習”は、おっさんたちが必ず盛り上がる鉄板トークだった

無言清掃のさなかに起きた、ある事件とは

「ただな、やっぱ喋っちゃうことあるのよ。それを誰かに見つかると大騒ぎになって、喋ったやつは途方もない重罪人みたいに扱われるわけよ。全クラスを回って謝罪しなきゃならないという鉄の掟があったんだ。無言清掃自体はけっこうやられていたけど、この謝罪行脚はうちの中学独自のものだったかも。とにかくそれが狂気じみていた」 「それはちょっと厳しいな」 「喋ってしまった理由、無言清掃を台無しにしてしまって申し訳ないという気持ち、そして今後の対策、みたいなことを全クラス回って喋らなきゃならないわけ」  謝罪されるほうも、掃除中に喋りやがってと深い怒りをもっているものはほとんどおらず、なぜ謝られているのか分からない状態だったらしい。  そんな無言清掃の中、事件が起こった。このエピソードを披露していたおっさんが急に深刻な顔になってトーンを下げて続きを話し出した。 「ある日の清掃の時間、いつものように無言で掃除していたらめちゃくちゃウンコしたくなったんだよ」 「あちゃ、やばい」  そんなもの無言でトイレに行けばいいと思うかもしれないが、この中学では「学校でウンコすると人権を失う」という意識が小学校から持ち上がりで続いていたらしい。

掃除をする前よりも汚くしてしまい……

「ウンコ赦しの儀式がこの中学にはなかったんだな」 「やはり重要だな、ウンコ赦しの儀式」  おっさんどもが口々にウンコ赦しの重要性を説く。  おっさんはとにかく我慢したけど限界だった。最終的には「ああああああああああああああああああああああああああああああああああ」みたいな感じでとんでもないことになったらしい。 「無言どころじゃない」 「断末魔」 「清掃時間なのにする前より汚くしている。脱糞清掃」  それだけならまあ、不幸な事件で終わるけど、なぜ喋ってしまったのか全クラスを回って謝罪行脚をしなくてはならない。なぜ喋ってしまったのか、ウンコを漏らしたときの断末魔の悲鳴をあげてしまったと丁寧に説明して回らねばならなかったのだ。 「松岡君がウンコ漏らしてすいません」  連帯責任なので同じ班のメンバーが全員で謝る。彼らの長い人生において人の脱糞で謝罪したことなど、これ1度の経験だろう。 「いやあ、それにしても面白い。中学や地方が変わると風習も色々と変わるものですね」
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こうやって奇妙な風習はできあがっていくのだ
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テキストサイト管理人。初代管理サイト「Numeri」で発表した悪質業者や援助交際女子高生と対峙する「対決シリーズ」が話題となり、以降さまざまな媒体に寄稿。発表する記事のほとんどで伝説的バズを生み出す。本連載と同名の処女作「おっさんは二度死ぬ」(扶桑社刊)が発売中。3月28日に、自身の文章術を綴った「文章で伝えるときにいちばん大切なものは、感情である 読みたくなる文章の書き方29の掟(アスコム)」が発売。twitter(@pato_numeri

pato「おっさんは二度死ぬ」

“全てのおっさんは、いつか二度死ぬ。それは避けようのないことだ"――


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