更新日:2023年07月12日 16:18
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伝説の“レディース総長”が振り返る「大きくは道を踏み外さなかった」意外なワケ

台湾出身の複雑な家庭環境

女族・かおりの現在——現在、都内ではほとんどヤンキーを見かけなくなってしまったんですが、90年代の栃木では多かったんですか? かおり:私が10代の頃は街を歩いていたら、普通にヤンキーがいましたね。じつは『ティーンズロード』全盛期でも東京には暴走族とかヤンキーってあまりいなかったらしいんですけど、地方はすごかったと思いますよ。栃木は東京から少し遅れていろんな若者カルチャーが入ってきたので。ギャルとかチーマーの流行も後になってからだと思います。 ——ヤンキー文化って、なんとなく北関東で盛んなイメージがありますね。 かおり:ただ、私の通っていた中学校は特別に荒れていたとかではなく、本当に普通でしたよ。といっても当時の“普通”なので。1クラスに2〜3人は不良っぽい生徒がいたし、竹刀を持ち歩いて何かあったらすぐ叩くような先生ばかりでしたけど……。 ——かおりさんは台湾で生まれ、4歳で両親が離婚。母親が単身日本で出稼ぎして、小学校高学年まで祖父母や親戚に育てられたとうかがいました。なかなか複雑な家庭環境だったと思います。 かおり:妹は未熟児で生まれたせいか、体も弱かったんです。だから、自分が甘えたい時期にぜんぜん構ってもらえないみたいな気持ちは強かったかもしれません。持病のある祖母と体の弱い妹、そして妹を溺愛する祖父の3人だけ、私より3年先に日本にいる母に合流していた。私だけ小学5年生まで台湾に置いていかれましたから……。 ——それぞれの事情もわかりますが、母親に甘えたい盛りの子どもには露骨に“差”を感じてしまうような話ですね。 かおり:スナックを営む母は、私が来日した後も別の街のアパートで暮らしていたので。想像していたような母との暮らしはできず、親子らしい会話もありませんでした。週に1回、会えるか会えないかだったので。いまとなっては当時の母の大変さ、ずっと私を支えてくれていたこともわかるんですけどね。 ——言葉がわからなかったことから日本の小学校ではクラスに馴染めず、いじめや嫌がらせを受け続けた時期もあったとか。かおりさんが下駄箱に自分の上履きがないことにキレてしまって、クラス全員の靴を校庭にぶん投げたというエピソードが印象的でした。 かおり:日本語はわからないけど、自分がいじめられていることくらいはわかるし、何か言い返したくても言葉がわからないから、ずっと我慢するしかなくて。そのもどかしさが爆発しちゃったという……。先生には叱られましたけど、それ以降はいじめられなくなりましたね。 ——もともとの気の強さや家庭環境、反抗期も相まって中学校ぐらいでグレ始めてしまったとか……。 かおり:問題を起こすことで母親に構ってもらいたいという気持ちはけっこう強かったかもしれません。

レディース暴走族の立ち上げは「純粋に“楽しそうだから”」

——中学卒業後、就職した工場の仕事を2ヶ月で辞め、スナックで働きつつレディース暴走族「北関東硬派連盟貴族院・女族」の立ち上げに至ると……野暮な質問ですけど、これは一体なぜ? かおり:純粋に“楽しそうだから”というだけだったんですよ。当時から「日本一」「全国制覇」みたいなことはあまり言ってなかったし、本当に仲間たちで集まれるような“居場所”がほしかった。そもそも私が周りの仲間たちに声掛けていた流れで「かおりが言い出したんだから、かおりが総長ね」と言われて総長になったんですけど。 ——非行を重ねた中学時代に比べ、「女族(じょぞく)」での3年間はむしろ“真面目”になったそうですね。 かおり:レディースってけっこう規則が多いんですよ。たとえば「ヤリマン厳禁」とか「シンナー厳禁」とか決めた以上、私は総長だから硬派でいなきゃいけない。じゃないと示しがつかないから。あと、喧嘩も簡単にはできなくなっちゃいましたね。総長の私が出ていくと大勢を巻き込んであまりにも大ごとになってしまうので。 ——ヤクザの事務所に一人で乗り込んだこともあると聞きましたが……。 かおり:さすがにヤクザ相手は、内心ビビりまくっていましたけどね。ただ、もともと私はすごくカッコつけだから、それを表には絶対出さないし、言いたいことは全て言っちゃう性格なんで。「命取られてもカッコよく散れるなら別にどうなってもいいや」という気持ちでしたね。
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大きくは道を踏み外さなかった理由
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1988年生まれ道東出身、大学でミニコミ誌や商業誌のライターに。SPA! やサイゾー、キャリコネニュース、マイナビニュース、東洋経済オンラインなどでも執筆中。いろんな識者のお話をうかがったり、イベントにお邪魔したりするのが好き。毎月1日どこかで誰かと何かしら映画を観て飲む集会を開催。X(旧Twitter):@tsuitachiii

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「いつ死んでもいい」本気で思ってた…

伝説のレディース雑誌「ティーンズロード」でカリスマ的存在だった平成の女暴走族「貴族院女族」元2代目総長「かおり」の誰にも話さなかった壮絶な人生の実話を30年を経た今、暴露する!
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