ジャンポケ斉藤と見取り図が秘蔵のお店で食らって語る。「ひとりメシ」の奥深き世界
「おひとりさま」という言葉が「流行語大賞」にノミネートされたのが’05年。ひとりラーメン、ひとり焼肉、ひとり寿司……漫画・ドラマ『孤独のグルメ』(ドラマシリーズはなんと昨年で10年目に突入)のブームも手伝って、現代の「ひとりメシ」は寂しいものではなく「リッチな自分時間の使い方」へと変化しつつある。
では、多くの人を魅了してやまない「ひとりメシ」の魅力とは? 「ひとりメシ」が大好きだという人気お笑い芸人2組――テレビ・ラジオ合わせてレギュラー番組8本のジャングルポケット・斉藤慎二さんと、「M-1グランプリ」3大会連続ファイナル進出の実力派コンビ・見取り図の盛山晋太郎さんが存分に語ってくれた。
斉藤:僕は食通ではないし、グルメのことを四六時中考えているわけではないんです。ただ、“ひとりメシの神様”が突然降りてくるんですよ。特に、舞台の合間や仕事が早く終わった日など、ちょっとした時間ができると、やってくるんですよね。なので、「ひとりメシ」するお店は、家や仕事場の近くなど、自分の生活圏内がほとんど。店選びも特別なこだわりはなくて、「早くて安くてうまいこと。ランチなら1000円以内」です。だからなのか、後輩芸人のコロコロチキチキペッパーズのナダルをメシに誘ったら「他の先輩の方がイイ店に連れて行ってくれそうなので遠慮しときます」って断られたことがあるんですよ(笑)。
そう自虐交じりに話す斉藤さんが我々を連れて行ってくれたのが、新宿のルミネtheよしもとから歩いて5分もかからない場所にある中華「達磨」だ。
斉藤:新宿で40年以上も営業している老舗の中華料理屋で、僕ももう10年以上通ってますね。実はこの収録の2日前も来たんだけど、そのときは満席で入れませんでした(笑)。僕がたいてい注文するのは回鍋肉定食! 野菜のシャキシャキ感や肉のジューシーさはもちろん、濃い目の味噌ダレが野菜の甘みとマッチしてマジでヤバいんですよ。キャベツ、肉、ピーマン、玉ねぎの表面に浮いた、油とタレが反発し合うマダラ模様がこれまたガツンと食欲を刺激してくるし、「絶妙」という言葉はこの回鍋肉のためにあると言ってもいい。「達磨」の回鍋肉を一度食べたら他のお店じゃもう食えなくなるというくらいの、ベストオブ回鍋肉ですよ。
ひとりメシキャリアも長い斉藤さんだが、実は今も抵抗感がないわけではないのだとか。
斉藤:人見知りだし、人目が気になるから「達磨」くらい馴染みの店でも、正直声を出して注文するのはいまだに恥ずかしいんですよ(笑)。「(テレビに出てるのに)あいつ友達がいないんだな」とか「やっぱり、ぼっちなんだ」とかって周囲のお客さんに思われてるんじゃないかって……。でも、気になったお店があれば、混んでいようがなんだろうが、堂々と入ることにしています。我ながらこういうところは、変に度胸があるんだよねえ。
多少の“恥ずかしさ”を堪えてでも「ひとりメシ」を愛し、通う理由とはなにか。
斉藤:先輩にも仲間にも一切気を遣わなくてよくて、「今これだけを食べたい、全部自分ひとりで食べたい」っていう“わがまま”を通せるのがいいんですよ。相方のおたけなんかは、(大皿料理を)周りに断らず、勝手に自分好みに味変とかしますけどね。マジで何やってんだよ、ふざけんなよって……(笑)。こういう社会や人間関係の煩わしらから解放されるのが「ひとりメシ」の醍醐味だし、至高の時間。舞台でウケたら一品追加って感じで仕事の原動力にもしてますし、逆にスベッても料理がテーブルに置かれた瞬間から会計が終わるまでは嫌な記憶を一時消去できる。色々と溜め込みやすい性格なので、僕にとって「ひとりメシ」は精神安定剤にもなってますね。
神様は突然降りてくる。社会の顔色から離れてひとり、メシを食う
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