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「M-1グランプリ2019」決勝進出9組のネタの見どころを徹底解説

 史上最高レベルの大混戦が予想される「M-1グランプリ2019」決勝がいよいよ行われる。令和初の「M-1チャンピオン」の称号を得るのはどの漫才師か。1秒たりともよそ見が許されない熱戦の火蓋がいよいよ落とされる。  すでに決勝進出を決めている9組の漫才師たちの特徴を改めて紹介したい。 <決勝進出コンビ(発表順)>

インディアンス(東京吉本・結成9年・初)

   ツッコミ担当木村亮介、ボケ担当田渕章裕からなる吉本興業所属のコンビである。田渕君がとにかくボケ倒し続け、それを木村君が必死になってツッコみまくるハイテンポハイテンション漫才である。  彼らは過去、数多くの賞レースの決勝に進出している。関西若手芸人の登竜門「今宮子供えびすマンザイ新人コンクール」やかつて開催されていた「MBS漫才アワード」、今や関東の若手にも門戸を開いている大阪・朝日放送主催の「ABCお笑いグランプリ」の決勝に進出。NHKが主催する「NHK新人お笑い大賞」には2度、NHK大阪放送局が主催する「NHK上方漫才コンテスト」にはなんと6度も決勝進出を果たしているのだ。しかし、一度も優勝はしていない。 「インディアンス」が活動の拠点を東京に移した2016年から彼らの漫才をよく見るようになった。会場は大ウケだが、俺は懐疑的だった。ボケ数が多く、とにかくボケをかぶせるのだが、「ボケを多くすること」「ボケをかぶせること」に尽力するばかりに、本来の「ボケ」の意味ではなく「しつこい」という笑いになっていた。  だから、どれだけ多くのボケを連ねても、それは「しつこい」というだけのボケになる。そうなるとひとつのパターンだけの笑いになってしまい、「ボケ」の印象も残らない。「面白いとは思うが、これでは『勝てない』」。そういう印象だった。  しかし、2017年の夏に見た彼らの漫才はそれまでと明らかに違った。「M-1」を深く理解して新たな価値観を作ろうとしているのがネタからにじみ出ていた。そして、2018年には2度目の「M-1」準決勝進出。決勝への夢は破れたが、「THE MANZAI 2018マスターズ」出場をかけた「THE MANZAI 2018プレマスターズ」で勝ち上がり、本戦出場。 今年の「THE MANZAI」でも勝ち上がり、最高顧問であるビートたけしさんから「たけし賞」まで獲得した。「インディアンス」は完全に「勝てる」漫才師へと変貌を遂げた。  個人的な話ではあるが、俺の年になると若手が集まる場所に行っても、先輩すぎて誰も話しかけてくれないことが多い。しかし、田淵君はいち早く声をかけてくれて、木村君は飲み会で隣の席に来てくれる。個人的に恩義を感じているコンビだ。「M-1」は何度も経験しなくていい。一発で勝ちきれ!!

ミルクボーイ(大阪吉本・結成12年・初)

 ツッコミ担当内海崇、ボケ担当駒場孝からなる吉本興業所属のコンビである。大阪芸術大学の落語研究会出身の2人は、否定肯定を繰り返し問題解決へと進んでいく漫才である。  数年前から彼らの漫才を動画でよく見ていた。その頃から、彼らは面白かった。漫才パターンも変わらなかったが、今年突然変異というか、周囲の見方が変わったのか決勝進出を果たす。そこから俺は「ミルクボーイ」の過去のネタと 現在のネタを見比べてみた。 「ミルクボーイ」のネタは内海君のツッコみ後に笑いがくるのが基本である。そこの打率が大きく変わった。過去のネタは面白いのだが、甘い部分が何か所かある。しかし、今年の「M-1」で見せた内海君のツッコミは10割といっていいほどの出来だった。  そして、彼らのネタは設定選びが難しいと思う。設定によってボケを待つ内海君が白々しくなるからだ。その部分も今年のネタは完璧だった。今現在の彼らは、どう見ても人気がないだろう。特に内海君。33歳で角刈りでベテラン漫才師が着るようなダブルのスーツを身にまとい漫才をしている。  ちなみに「EXIT」のりんたろー。君と同級生である。彼は爆発的に人気がある。人気が「ある」「ない」ということを、自然発生的なもののように言う芸人もいるが、それは違う。先天的に「男前」というところから人気が出る芸人もいるが、基本的に人気は「作る」ものである。しかし、忘れてはならない基本は「面白い人である」ということ。  内海君もりんたろー。君も2人とも「面白い人である」。その上で、りんたろー。君は「EXIT」というものをトータルコーディネートして「ムーブメント」を作った。内海君は「本気で漫才をやろう」とあえて逆を走り、すべてを削ぎ落として「面白い人」であることに特化して、現在の「ミルクボーイ」を作り上げた。  だから彼は、ネタ中にダブルのスーツも角刈りもいじったりはしない。あの衣装と髪型は彼の「信念」だからだ。彼らは順番が何番になろうとも、決勝の舞台で爆発するだろう。絶対にハマる。そして、ブレイクするだろう。そのときは、あの衣装が逆に際立つはずだ。 「EXIT」の服装が際立ったように。「EXITの真裏」ミルクボーイに期待しよう!!

オズワルド(東京吉本・結成5年・初)

 ツッコミ担当伊藤俊介、ボケ担当畠中悠からなる吉本興業所属のコンビである。「オズワルド」の漫才は「言葉」と「間」、そして伊藤君の「声」である。   「オズワルド」がテレビ初出演をしたのがなんと今年の3月だという。こんなに面白いコンビが今までどこにも引っかからなかったことが不思議なくらい、 才能を感じさせるコンビだ。「M−1グランプリ」2回戦。俺がMCを担当した日に「オズワルド」は出場し、大爆笑をかっさらう。3回戦も俺がMCを務める日に「オズワルド」は出場。2回戦と同じネタをするのかと思いきや、別のネタを披露していた。ウケてはいた。ただ、2回戦のほうがウケ度が高かったように俺には思えた。  ライブ終わり、喫煙スペースでタバコを吸っていると、2人がそこにいた。 俺は彼らに「2回戦とネタ変えたよね?」と確認をすると「はい」と答える。そして、俺は軽い気持ちで「おー、勝負したんやなー」と言った。昨今の「M-1」は3回戦と準々決勝のネタをネットで動画配信されるが、準決勝進出者は、準々決勝のネタを動画配信されない。だから、準決勝進出コンビでも必ず配信されるのが3回戦なのである。  一番ウケのいいネタを温存して、3回戦をクリアし、準々決勝で一番ネタを披露して準決勝に進出できれば、動画配信されることがなく準決勝に一番ネタで挑むことができる。それを考えれば作戦として3回戦は二番ネタでしのぎたい。俺ならそういう戦略を立てる。そういう気持ちで「おー、勝負したんやなー」と言ったのだ。  しかし、伊藤君は俺を許さなかった。「どういうことですか?」「お言葉ですが、ウケでは問題なかったと思うのですが?」。聞かれたことをすべて答えながら、俺は心の中で「伊藤君!! 目、バキバキですやん!!」と叫んでいた。 抑えられないほとばしる「M-1」への情熱。触るものはすべて傷つけるのではないかという情熱。俺は心のなかで「もうこの歳で後輩にキレられたないわー」 と思いながらも感動した。ここまでの情熱がかつての俺にもあったなら、俺の「M-1」も変わっていたのかなと思えた。  後出しになるが、あの時に俺は「オズワルド」は決勝に進出すると確信した。2回戦の「オズワルド」を見た時点で、俺は彼らのことを調べていた。彼らの昨年までの「M−1」の成績は最高で3回戦進出である。そういうコンビの傾向とすれば、「1つでも上を」という気持ちになり、3回戦も一番ネタで勝負しがちである。しかし「オズワルド」は違った。一番ネタとか二番ネタとか関係ない。そういうもの自体、存在しないのかもしれない。誰にも真似のできない彼らだけのネタがそこにある。決勝の舞台で「オズワルド」を刮目せよ!!

見取り図(大阪吉本・結成12年・2年連続2回目)

 ツッコミ担当盛山晋太郎、ボケ担当リリーからなる吉本興業所属のコンビである。ローテンションなリリー君のボケとハイテンションな盛山君のツッコみが魅力的なコンビである。   昨年、初の決勝進出、しかもトップバッターで登場した「見取り図」。結果は10組中9位に終わり、ほろ苦い「M-1」デビューとなった。そして、今回の「M-1」では、2回目の出場にもかかわらず、初出場コンビが最多の7組もいることから、「かまいたち」とともにまるで「ベテラン」のような位置づけになってしまった。  2年連続出場の「見取り図」。前回の記事でも書いたが、「連続決勝進出」 をしているコンビは、ある意味、すでに快挙を成し遂げているのである(俺もかつて「2 年連続出場」をしているので書くのはお恥ずかしい。しかし、我々の頃とは価値が違います)。決勝に連続で出場するには「上積み」という部分をどこまでクリアできるかが問題であり、準決勝の「見取り図」はきっちり上積みされた漫才を披露していた。 「見取り図」の漫才では、時折、例えで架空の人物が登場する。それを途中で盛山君が気づき「誰やねん!!」とツッコむ。これが1つのパターンになっている。昨年の決勝での「見取り図」はそのパターンを取り入れていたが、序盤に出てきた架空の人物を最後にツッコんでネタが終了。そこを山場にしたかったと思うが、大きな笑いが作れなかった。  そのネタを測って計算してみた。ネタ開始34秒でその「架空の人物の名前」が出る。そして、4分34秒で盛山くんがツッコみ、4分45秒でネタが終了する。時間にして4分間の間が空いていた、この構成だと、冒頭に登場した「架空の人物の名前を覚えておかないといけない。あまりにも距離が離れすぎている。  それに、このパターンは情報をインプットしたまま漫才を進めなければならないので、集中力を欠いてしまうというマイナス要素もある。印象に残しすぎると「何かある」と思われる。印象に残さなすぎると忘れ去れ、瞬発的な笑いが弱くなる。とてもリスキーなパターンなのである。  そして、今年の準決勝での「見取り図」は、後半の山場を別のもので作っていた。2人のラリーでどんどん笑いを作っていく。観客のテンションも右肩上がりだった。昨年と違う「貫禄」がすでに備わっていた。その「貫禄」で初登場組にきっちりと「M-1」の厳しさを叩き込んでほしい!!

かまいたち(東京吉本・結成15年・3年連続3回目)

 ツッコミ担当濱家隆一、ボケ担当山内健司からなる吉本興業所属のコンビである。言わずと知れた「キングオブコント」王者であり「M-1グランプリ」では3年連続決勝進出。「漫才もコントもそつなくこなせる」というようなレベルではない。どちらも超一流。ほかの出場者より実績では一枚も二枚も上手な強者コンビであり、はっきり言えば、実績だけではなく技術力、コンビネーションでもナンバー1のコンビだ。 「キングオブコント」王者だからかわからないが、彼らは「M−1グランプリ」決勝の舞台では「しゃべくり漫才」で勝負している。しかし、この「しゃべくり漫才」でも、超一流の演技力が冴え渡る。過去のネタで、「山内君が『USJ』と『UFJ』を間違える。それを濱家君が指摘するのだが、山内君はそれを間違えたのは濱家君だと言い出す」というネタがある。  見ている観客は目の前で山内君が間違えたのを見ている。だから濱家君の指摘は正しいことはわかっている。だけど山内君は一人、濱家君だと言い続ける。その顔にわざとらしさは一切ない。「本当にこの人は自分が間違ったと思ってないのではないか?」と思わせる演技を見せる。それはある意味、「狂気」の演技である。  そして、昨年の決勝の「タイムマシーンに乗って過去にやり直したいこと」というネタでは、後半濱家君は何を言っても理論上山内君に話を潰されることになる。潰され苦笑いを浮かべる濱家君。この一連の流れの中で、濱家君は本気で訴え、本気で潰され、本気で苦笑いを浮かべる。濱家君も「狂気」を覗かせる。  特筆すべきところはまだある。彼らは言い合いのネタが多い。それだけにラリーも多くなるが、ほとんど声がかぶらず聞き取りやすい。そして、本筋からズレたボケを入れ込むのもうまい。ここまで文句のつけようがない「かまいたち」がなぜ優勝できないのかと考えれば、逆に「未熟さ」「青さ」がないからではないかと思わざるを得ない。  上記した「インディアンス」が数々の賞レースで決勝進出するも、一度も優勝していないのとは逆に、「かまいたち」は狙った獲物は逃さない。「ABCお笑いグランプリ」も「NHK上方漫才コンテスト」も「歌ネタ王決定戦」も、そして「キングオブコント」も獲ってきた。そして今年が「M-1ラストイ ヤー」。これは「M-1」だけではない。タイトルホルダーである「かまいたち」にとっての、最後の賞レースになるのだ。  2人が今回「M-1」タイトルを 逃したとしても、2人の評価は一切変わらないだろう。だからこそ、数多くのタイトルホルダーである「かまいたち」が、どの出場者よりも「M-1」のタイトルを欲することこそが、手中に収める近道なのかも知れない。我武者羅に「青く」挑む。前人未到へ、いざ!!
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トップバッターは不利(!?)の変化球漫才コンビ
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今年もやります!! ラジオでM-1!!
12月22日(日)18時30分~22時30分
ABCラジオ/AM1008・FM93.3「ラジオでウラ実況!?M‐1グランプリ2019」
出演/ユウキロックほか
radikoからも聞けます!! 全国の皆さん!! 一緒にM-1を楽しみましょう!!
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