「人手不足倒産」が深刻化…“日本ならでは”の理由で問題解決が先送りに
帝国データバンクが8月8日に発表した調査結果によると、人手不足に起因する企業倒産が2年連続で増加していることがわかった。人手不足は以前から問題視されていたが、解消はされていないどころか深刻化しているようだ。
少子高齢化が深刻化するなか、ある意味仕方のないことではあるが、なぜ歯止めをかけることができないのだろうか。労働問題に取り組むNPO法人POSSEで代表を務める今野晴貴氏に話を聞いた。
はじめに現状をひも解いていきたい。今野氏は「ひとえに人手不足と言っても様々な要因から生じます」と話す。
「まず、“激務なのに低賃金”といった待遇面に対する不満から、『人材を確保できない』、『人材を流出させてしまうケース』が挙げられます。主に肉体労働やケア労働など、私達の生活を支えている“エッセンシャルワーカー”の職場で多く見られる現象です。これらのケースは人手不足が問題視される以前から常態化しており、長年解消されていません。
また、“会社の中枢を担う幹部候補がいない”というケースも無視できません。就職氷河期に採用を絞ったことによって中堅社員の数自体が少なく、管理職などを任せられる人材が少ない中、今度は育成対象とする新卒の絶対数が不足しています。さらには『出世したくない』『責任を負いたくない』と考える人が増加しており、昇進を打診された挙句、辞めてしまう人もいるようです」
新入社員が早々に辞めてしまい、若手人材の不足が発生するパターンも散見されるようだ。
「『最低3年は経験を積むために続ける』という考え方が通用しなくなってきているとは、以前から囁かれていたのですが、最近はその傾向が加速しています。現在の若者は一つの企業に勤め続けることで、自分のキャリアが切り開かれるとは考えていません。日本の一流企業であっても、グローバル競争に淘汰される恐れもあるからです。
加えて、“追い出し部屋”も常態化しており、正社員に採用され、会社のいうとおりにキャリアを歩んでいったとしても、企業が雇用を守ってくれるとは限りません。よく言えば“成長意欲が高い”、悪く言えば“余裕がない”ということです。『今の会社にいても大丈夫なのか?』と常に感じており、その不安から退職してしまう人も珍しくありません」
「待遇が悪いから」「昇進したくないから」「成長できなさそうだから」といった理由が人手不足のトリガーになっている。働く側のニーズをしっかり理解していなければ、企業としても問題を解決する糸口は見つけられないだろう。
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