更新日:2016年03月11日 00:22
仕事

元パチプロの“ビール伝道師”が「よなよなエール」で会社を成長させた秘訣

井手直行氏

井手直行氏

 軽井沢でコツコツと地ビールを作り続けること17年。「お金はないが知恵はある」をモットーに一地方のビールメーカー「ヤッホーブルーイング」を大手に次ぐ業界6位にまで育て上げた名物社長、井手直行氏。ビール伝道師を名乗り、時には道化にもなりながら熱くビール愛を説く“知的な変わり者”の素顔とは?  ヤッホーブルーイングのヒット商品「よなよなエール」は、17年前に地ビールとしては初の缶入りで発売された。たった7人でエールビール造りを始めたということだが、ヤッホーブルーイングの創業者で、親会社「星野リゾート」の星野佳路社長がアメリカ留学中に飲んだエールビールに衝撃を受け、醸造所を設立したのがスタートだという。また、井手氏もそもそもビール造りの経験はまったくない状態だった。 「お酒は好きだったのですが、あくまでも飲む専門。僕は29歳で入社する前は、エンジニアをやったり環境アセスメントで働いていた異業種組です。仕事に飽きると後先考えずに辞めちゃって、パチプロとして日銭を稼いで全国を放浪するような生活を送ってました。放浪中に旅先で見知らぬ人と交流するのが面白くって、旅を通じて“自然と人”に関する仕事につきたいと思っていた矢先に、軽井沢の広告代理店の求人を見つけて、自然豊かな長野に移住したんです」  そこで星野氏と出会い、意気投合。しかし、すんなりと入社というわけにはいかなかったらしい。 「面接では人事部長からこっぴどく説教されたんですよ。『あなたは転職が多いし、またすぐ辞めちゃうんじゃないですか?』って。僕も売り言葉に買い言葉で『つまらなかったら、辞めちゃうかもしれないですね』なんて生意気なこと言っちゃいました(笑)。僕は相手が誰であろうと自分の思ったことをハッキリ言うタイプ。そんなところが星野には面白い人材だと思ってもらえたのかもしれません」  その後、ネット販売に活路を見いだし、井手氏は悪戦苦闘しながらも会社を成長させていった。 「注目を集めるために例えば『よなよなエール』の缶をキャラクターに見立てて旅をさせるおふざけ企画をやったりして、『こいつら面白そうだな。楽しそうだな』と思ってもらうことで、ブランドのファンを増やす努力をしました。ネット商店の店長として宇宙人とかロボットの仮装をしてみたり、コントをやったり、遠方のお客さんに直接商品を届けてそのリポートしたりと本当に体を張りました(笑)」  さまざまな場所に仮装で登場して話題になった成果もあり、「よなよなエール」は楽天市場のビール売上ランキング1位を継続し、「ショップ・オブ・ザ・イヤー」を7年連続受賞の快挙を成し遂げている。「トップが身体を張ると話題を生む」がモットーの井手氏。製品の質を高めることはもちろんだが、それをどのように消費者に届けるのか、というビジネスの難題へのヒントになる話だ。 ※9/22発売の週刊SPA!「エッジな人々」では、井手氏のロングインタビューを掲載中。ビール業界を活性化したい思いを語っている。 本紙構成/山内聖子 撮影/難波雄史 再構成/SPA!編集部
週刊SPA!9/30号(9/22発売)

表紙の人/広瀬アリス

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