仕事

「人手不足倒産」が深刻化…“日本ならでは”の理由で問題解決が先送りに

「転勤は拒否できない」も今や昔

 古いままの企業の体質や価値観も障害の一つだろう。「“使い勝手の良い従業員”を未だに求めていることも大きい」と今野氏はため息をつく。 「例えば、一昔前は当たり前とされていた『転勤は拒否できない』という暗黙の了解も、共働き世帯が増えたことでそう簡単にいかなくなりました。ただ、そうした状況に対応せず、旧態依然の働き方を従業員に求める企業は多いのが現実です。  最近では、転勤の多い国家公務員や全国的企業に勤める男性は『恋愛弱者になった』という指摘もあるほどです。女性が男性を選ぶ際に、自分のキャリアに悪影響が出そうな職業の人を敬遠するというのです。  企業の言いなりで働くことに拒否感を示す人は増え、働き方のニーズは多様化しました。にもかかわらず、体質や価値観をアップデートできていないため、人材確保がままならず、自らの首を絞めている企業も少なくありません」  働く側のニーズをくみ取らず、企業側が未だに“社畜扱い”を強いている現実を直視しないといけないのかもしれない。

最高益を更新している企業は多いはずだが…

 企業側が働く側のニーズの多様さ、さらには時代による情勢の変化を理解することがいかに大切であるかがわかった。ただ、それ以上に「待遇に不満を持つ人が多い」という指摘があったが、この点の改良・改善は必須なのではないか。  実際、2023年に入って寿司職人を筆頭に“海外で出稼ぎする日本人”が頻繁に話題になった。裏を返せば、現在の待遇面に不満を持つ人が多いことが伺える。とはいえ、長年の不景気の影響によって現状を打破できない企業も無数にあるはず。今野氏は「もちろん小規模の企業にとっては簡単ではありません。どこの企業でもできるものではないでしょう」としつつ、「ただ、最高益を更新している企業は多いですよね」と指摘。 「2023年3月期に純利益が過去最高だった企業は全体の4社に1社。好調な企業は少なくないのですが、その売り上げは役員報酬や株主配当に回されがち。実際、非正規労働者と何かしらのトラブルを起こしている企業を調べると、過去最高益を更新していることは珍しくありません。  そういった企業は非正規労働者を大量に雇うことでコストを抑える傾向があり、従業員はもちろん、下請け企業にも利益を還元しようとはしません。あるいは、インフレへの『便乗値上げ』によって利益を上乗せしている場合もあります。こうした企業に対しては、社会の反発も大きいでしょう。  だからこそ、労使交渉をするなどして待遇改善を訴えることで、こうした理不尽な状況を変えやすくなっています。もちろん、人手不足も賃上げに有利に働いています。社会を犠牲にした最高益に、人手不足が加わることで、賃上げの条件が整えられている、といえるでしょう
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“働きやすくなる法整備”が必要に
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フリーライター。主に政治経済、社会問題に関する記事の執筆を手がける。今、知るべき情報を多くの人に届けるため、日々活動を続けている。Twitter:@mochizukiyuuki

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