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誰も聴いていない「地獄のオンライン会議」で起きたカオス。焦った司会者は…

ほぼ聴いていなくてもバレないのが一番の利点

ookawa621458A2939_TP_Vこの講演会は、20名ほどの参加者のうち、10名が発表者で、10分ほどの発表を順番にやっていくことになっていた。全国各地から選ばれた精鋭が発表するのだけど、幸いなことに僕は発表者には選ばれなかった。精鋭ではないのだ。本日はただ聴くだけ、なんとも気楽なものである。 「では、最初に茨城の山本さん、お願いします」 「よろしくお願いします。茨城の山本です。それでは初めます」 司会者に促され、茨城の山本さんに画面が切り替わる。そのまま、山本さんの画面が共有され、発表が始まる。本当に便利だ。この20人が1つの場所に集まると多大なる費用が発生することを考えるとこんなに手軽でいいのかと考えてしまう。 「ありがとうございました。質疑応答は最後にまとめて行います。では次は北海道の重松さん、お願いします」 とんとん拍子で講演会が進行していく。 実は、このオンラインの講演会、最大の功績は費用や移動手段ではなく、別の場所にある。なんと、聴くだけの立場なら、ほぼ聴いていなくても大丈夫な点が素晴らしいのだ。

発表予定の人間がその場にいない

基本的に、発表者以外はマイクとカメラをオフにして聴くだけなので、講演会の様子だけを流しておいて別なことをしていてもまったくバレないのだ。そう、移動時間だけでなく、講演会の時間すらも効率的に使えるのだ。 そんな感じで、講演会の様子を抑えめの音量で流しつつ、別のパソコンを使って別の仕事をする。そんな自分がとても効率的な人間に思えた。これが対面の講演会だったらつまみ出されているところだ。 「あれ、熊本の高岡さん、おられませんか?」 別な作業をしながら音声だけで聴いていた講演会の様子が少しおかしい。どうも、次に発表する予定の熊本県の高岡さんがオンライン会議室の中にいないらしい。 これに困ったのは司会者だ。 「熊本の高岡さん、おられませんか?」 何度も呼びかけるが、どう探索しても熊本の高岡はいない。 「メールの方で呼びかけてみますので、できましたら繰上りで次の順番の、東京の木下さん、お願いします」 「え、あ、はい、えっと、はい! え、はい!」
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その場にいない人間が続出
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テキストサイト管理人。初代管理サイト「Numeri」で発表した悪質業者や援助交際女子高生と対峙する「対決シリーズ」が話題となり、以降さまざまな媒体に寄稿。発表する記事のほとんどで伝説的バズを生み出す。本連載と同名の処女作「おっさんは二度死ぬ」(扶桑社刊)が発売中。3月28日に、自身の文章術を綴った「文章で伝えるときにいちばん大切なものは、感情である 読みたくなる文章の書き方29の掟(アスコム)」が発売。twitter(@pato_numeri

pato「おっさんは二度死ぬ」

“全てのおっさんは、いつか二度死ぬ。それは避けようのないことだ"――


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