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誰も聴いていない「地獄のオンライン会議」で起きたカオス。焦った司会者は…

その場にいない人間が続出

これに焦ったのは東京の木下さんだ。まだまだ猶予があると思っていたら突如として順番が回ってきたのだ。その焦りっぷりが面白い。東京の木下さんはまったく心の準備ができていなくてしどろもどろになっていた。 「さて、木下さんありがとうございました。まだ熊本の高岡さんには連絡がつきません。さらに繰上りで新潟の田中さん、いけますでしょうか?」 実はこの部分に便利さゆえの落とし穴がある。これが一堂に会して集まる講演会ならば、出張などの手続きが必要となるので、まあ、参加を忘れることはない。ただ、このようにオンラインだとそこまでの煩わしい準備が必要でないパターンがある。そうなると、熊本の高岡のように忘れてしまうことがあるのだ。 「新潟の田中さん、いけますでしょうか?」 「田中さん、おられますか?」 なんてこと! 新潟の田中までいない。とんでもないことになった。 「すいません、田中さんもおられないようですので、次の次の方、お願いします」 「え、あ、はい、えっと、はい、えっと、はい」

なんと40分ものタイムロスが発生してしまい……

次の次の人もめちゃくちゃ焦っている。俄然、目が離せなくなってしまった。別の仕事をしている場合じゃない。 「それでは、わたくし愛媛の園田が発表させていただきます。まずこちらの資料を(ブツン)」 満を持して登場した愛媛の園田は、数秒ほど喋ると回線不調なのかそのまま落ちてしまった。もうめちゃくちゃ。 結局、熊本の高岡、新潟の田中、そして意外な伏兵として愛知の佐藤まで参加自体を忘れていた。愛媛の園田も戻ってこなかった。さて、これに困ったのは司会者だ。全員の発表が終わったのに4人分の40分ほどの時間が余ってしまったのだ。 「質疑はありますでしょうか? 質疑でなくとも何かコメントのある方」 と、余った40分を消化しようとするのだけど、さすがに質疑応答で40分はよほど議論がヒートしない限り消化できない。しかも悪いことに、あまり熱心に質問する参加者がおらず、ほぼ沈黙の時間が流れた。 「では、私の方から、東京の木下さんに質問なのですが……」 なんとか司会者が質問をひりだすけれども、木下も一問一答みたいな感じで答えを断言するだけなので、まったく議論が盛り上がらない。もうちょっと空気を読んで返答を長引かせてほしいものだ。
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焦った司会者がついに奇策をとる
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テキストサイト管理人。初代管理サイト「Numeri」で発表した悪質業者や援助交際女子高生と対峙する「対決シリーズ」が話題となり、以降さまざまな媒体に寄稿。発表する記事のほとんどで伝説的バズを生み出す。本連載と同名の処女作「おっさんは二度死ぬ」(扶桑社刊)が発売中。3月28日に、自身の文章術を綴った「文章で伝えるときにいちばん大切なものは、感情である 読みたくなる文章の書き方29の掟(アスコム)」が発売。twitter(@pato_numeri

pato「おっさんは二度死ぬ」

“全てのおっさんは、いつか二度死ぬ。それは避けようのないことだ"――


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