仕事

“文章ノウハウ本”が大ヒット中の小説家が、書く仕事は「一般常識や社会人スキルが大事」と強調するワケ

長く続けていくことは簡単ではない

頭を抱える女性 会社員として学んだ常識やビジネスマナーが出版の世界で武器になるということも大いにありそうだ。  さまざまな媒体とジャンルがあるため一概には言い難い部分はあるが、近年人気の「Webライター」でも同じことが言えるのかもしれない。 「クラウドソーシングサイトに募集を出しているようなWeb系の小さな案件とかは、文章力はもちろんですが、それよりもコミュ力があって、きちんと納期を守れるような常識人を探していますよね。私も作家デビューした直後に、某クラウドソーシングサイトでライティングの仕事を2本ほどしたことがあります。ただ、募集は文字単価1円以下ばかりでモチベーションがまったく上がらず続けられませんでした(汗)。  文字単価の仕事というのは、裏を返せば、発注側が相手(ライター)のことを全く信用していないんですよね。“1文字いくら”として、キッチリと数字で決めておかないと、後々いろんなトラブルになるかもしれないので」  ここ数年で“文章で稼ぐ仕事”は間口が大きく広がっているが、長く続けていくことは簡単ではないのだ。

「いい文章の書き方は実際に書かないと身につかない」

秀島迅

秀島迅氏

 そんななかで秀島氏がこれまでに培ってきたノウハウ・文章テクニックを惜しげもなく披露している“クリエイターのための”シリーズ。 「こうした実用書を書いたのは、このシリーズが初めてなんですが、小説よりも手離れが早いし、読者さんのレスポンスも早い。Amazonなどでもポジティブなコメントが多くて非常に嬉しいです」  ただ、素朴な疑問として、厳しい世界で同業のライバルを増やすことにもつながってしまうのでは……? 「文章を書くって、運動で言えば水泳みたいな全身運動と一緒なんです。手の動き方や足の動かし方の練習以外にも、手足の動作をどうやって“連動”させていくのか。実際に25メートルを何本も泳いでみないと、いい泳ぎ方は身につきません。  なので、本をたくさん読むことも大切なんですが、実際に書いて、自分なりの型を身につけることが不可欠です。完全に自己流というのもハードルが高くて、まずはひとつずつ泳ぎの動作を確認していくように、こうした解説本をファーストステップとして読むことはとても有意義だと思います」  自分の言葉で人に伝わる文章をどこまでも追求していける奥深さこそ、作家や小説家といった仕事の魅力なのかもしれない。最後にいやらしい話だが、“クリエイターのための”シリーズ1冊あたりの印税についても質問してみると……。 「具体的な額は勘弁してほしいんですが、イメージ的には中古の国産車が1台ずつ買えるような感じですかね。このシリーズだけで生活するのは今のところは難しいです。ただ、シリーズが20冊ぐらい続いてくれれば、そこそこ印税で食べられるようになるかもしれませんけど……まだ4冊目ですからね(笑)。シリーズが少しでも続けられるよう、日々精進していければと思っています」 <取材・文/伊藤綾>
1988年生まれ道東出身、大学でミニコミ誌や商業誌のライターに。SPA! やサイゾー、キャリコネニュース、マイナビニュース、東洋経済オンラインなどでも執筆中。いろんな識者のお話をうかがったり、イベントにお邪魔したりするのが好き。毎月1日どこかで誰かと何かしら映画を観て飲む集会を開催。X(旧Twitter):@tsuitachiii
1
2
プロの小説家が教える クリエイターのための語彙力図鑑
プロの小説家が秘密にしたがる『語彙』のテクニック満載!小説家、ラノベ作家、漫画家、シナリオライター、脚本家、SNS投稿などでも使える、“頭の中のイメージを適切に描写する言葉選び”ができるようになる一冊が誕生!

プロの小説家が教える クリエイターのための 名付けの技法書
プロの小説家が名付けのセオリーやルールを徹底解説。「読者の好感度を高める音の響きがある」「ライバル、敵役の名付けの技法」「売れる正攻法タイトルの大原則」など、小説投稿サイトのPV数などを伸ばしたい場合にも参考になるプロが秘密にしたがる最強の技法を余すことなく解説します。

おすすめ記事
ハッシュタグ