「ほんまに赤字経営ですわ」笑い飯・哲夫がそれでも格安塾を続ける理由。“子育て中のイライラ”対処法も伝授
―[インタビュー連載『エッジな人々』]―
日本一の漫才師は、教育にも力を注いでいる――。笑い飯・哲夫といえば、’02年から9年連続でM-1グランプリ決勝に進出し、’10年には優勝の栄冠を手にした「笑い」のプロフェッショナル。実は約10年前から、大阪市淀川区で地域の子どものために寺子屋(格安の補習塾)を経営していることはあまり知られていない。「塾はほんまに赤字経営ですわ」と笑い飛ばす男が、ボケではなく、子どもたちの教育についてホンネで語ってくれた。
子どもは「がんばらない教育」で強く育つ
言葉狩りが本質を見失わせる
――一冊にまとめる作業のなかで、日本の教育で気になった点はありましたか?
哲夫:個人的には、現代の“言葉狩り”がひどいと感じます。だから、あえて今回の単行本でも“直接的な言葉”を結構書きましたが、担当編集にちょっと直されてたみたいですね(苦笑)。当たり前に差別のない世界のためには、言葉の配慮は必要。ただ、“世間に気を使いすぎた言葉”を、子どもに伝えるのはいかがなものか。
例えば、子どもの自殺が社会問題化する一方で、「自殺」という言葉を使うのが憚られ、「自死」と言い換えられる……。「自殺」という言葉には、やってはいけないという戒めの意味がある。もちろん、自らを殺す「自殺」という言葉が偏見や差別を生みかねず、ほとんどが追い込まれた末の死だから「自死」とするべきという意見はわかりますよ。
でも、自殺すれば自分の人生が終わってしまうだけでなく、みんなが悲しむし、人にも迷惑がかかる。どんな言葉を用いるかよりも、こうした肝心なことすら子どもたちに教えてはいけないような風潮には大きな違和感を覚えます。
――現在、「自死」という表現がもっぱら使用されるのは、’00年にWHO(世界保健機関)が自殺防止を目的に発表した「自殺報道ガイドライン」の影響が大きいとみられます。
哲夫:言葉狩りの横行は、メディアの責任も大きい。だから、僕は自分自身が発信する“メディア”となってできることをやっていきたい。
そんな意味もあって始めたのが地域教育です。学校の先生も、親御さんも忙しい。おじいちゃん、おばあちゃんに子どもの面倒を見てもらおうと思っても、高齢化や核家族化で叶わず、おのずと子どもは内向きになり、家に閉じこもることになりがち……。地域が子どもを見守り、育ててあげることが大事です。
ウチの地元には、いまだに戦前の「隣組」が残っていて、近所のおっちゃん、おばちゃんが忙しい親の代わりに地域で子どもの教育を担ってます。
――まさに著書のタイトル『がんばらない教育』と重なります。著書でも「がんばらない」=「ムリしない・期待しすぎない・心配しない」の3つの柱に沿って、繰り返し説いていました。
哲夫:子育てをしている親は、誰しもイライラするもの。それは、親が「自分だけががんばっている」と思い込んでいるから。では、このイライラをどう解決するか。がんばっていると思わないようにすればいいんです。子どもはいい意味でほっといて、ある程度は自由にやらしてあげる。
ところが、親は子どもにいろいろやってあげたがる。ウチの妻もそうで「まだまだ、やってあげんと」と世話を焼きたがりますが、僕が「子どもにやらせたらいいがな!」と早いうちからほったらかしてます(笑)。
――とはいえ、子どもに任せても失敗するからやってあげたい、という親は多い……。
哲夫:人さまに迷惑をかけない限り、失敗は成功の手前の段階と受け止めましょう。もちろん、子どもは三度、四度と失敗を重ねますよ。でも、教育で大事なのは反復。繰り返し教えてあげることです。
自転車の乗り方も、子どもが何度も危ない思いをしながらも、「そのやり方は危ない」「それは違う」と繰り返し教えて、ようやく乗れるようになる。成功も失敗もして、子どもは大人になっていく。外の世界に飛び出さないで、自分の枠のなかで成功だけを重ねてもね……。他人の痛みがわからない、傲慢な大人になりかけない。もっと大きな枠があることを教えてあげたい。
’74年、奈良県生まれ。県下随一の進学校・県立奈良高校から関西学院大学文学部哲学科に進学。卒業後の’00年に西田幸治と笑い飯を結成し、’10年、M-1グランプリ優勝を果たす。『がんばらない教育』『えてこでも分かる笑い飯・哲夫訳 般若心経』ほか著書多数
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