更新日:2024年01月24日 16:19
スポーツ

なぜ高校球児は“下級生をいじめる”のか「しごきを美化するOBにも問題が」名監督が実際に行った対策とは

日大三時代もいじめはなかった

日大三の監督に就任した97年以降も、いじめがないように気を配った。合宿所では3年生、2年生、1年生が1名ずつ相部屋となったが、いじめはまったくなかった。それどころか、高校野球が終わって学校を卒業する頃になると、「下級生のときには、同部屋の先輩によくしてもらいました」と感謝の言葉を口にしていた部員が後を絶たなかった。 「私は折を見て学年別に選手を集めて、3年生には『下級生をいじめるなんてもってのほかだぞ』と言っていましたし、2年生には『1年生を守ってやるんだぞ』、1年生には『上級生との間で何かあったら遠慮なく言いに来るんだぞ』と必ず伝えるようにしていたんです。 指導者のなかには、『一度しっかりと言いましたから』という人もいますが、一度言っただけでは伝わらないということもある。とくにいじめというセンシティブな問題については、指導者が常に目を光らせていないといけないものだと思わなければ、野球部内のいじめはなくならないものなんです」 と小倉は話す。

「今はダメだけど」ではなく「当時も異常だった」

今でも高校野球経験者のなかには、「あのとき先輩にしごかれたから根性がついた」「あの厳しい上下関係によって精神力が磨かれた」という人も見受けられるが、小倉は「そんなことは絶対にあり得ない」と力説する。 「最近はYouTubeで元プロ野球OBが、自身の高校時代を振り返って、『あのしごきがあったから今の自分がある』と言っているのを見かけますが、こんなことを言っているうちはいじめは絶対になくならないですね。 そうした人たちは、決まって『今はダメだけど』と注釈を入れて言いますが、私に言わせれば『当時も異常だった』のです。そのことに気がつかないで、嬉々として話している姿を見ると、子どもたちではなく指導する大人の側にも問題があるなと思わざるを得ません。 たとえいじめられた時期があっても、後にプロ野球選手にまでなれたら、昔のことをどこかで美化していることだってあり得ます。けれども、プロ野球選手はおろか、その後野球そのものを辞めてしまうようなことになれば、『在学中はあの野郎にいじめられた』と恨みの念しか湧いてこないものです。それが大学生、社会人となっても永遠に残ってしまう。 いじめたほうは忘れていても、いじめられたほうは絶対に忘れられないもの。そんな人間関係で終わってしまう高校3年間の野球になったら、ただただ寂しいものですよ」
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「野球部を新設した学校」が注意すべきこと
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スポーツジャーナリスト。高校野球やプロ野球を中心とした取材が多い。雑誌や書籍のほか、「文春オンライン」など多数のネットメディアでも執筆。著書に『コロナに翻弄された甲子園』(双葉社)
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