更新日:2024年01月24日 16:19
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なぜ高校球児は“下級生をいじめる”のか「しごきを美化するOBにも問題が」名監督が実際に行った対策とは

「野球部を新設した学校」が注意すべきこと

最近は少子化の影響もあって、女子高から男女共学になった高校も多い。そうしたなかで、甲子園出場を果たし、野球強豪校の仲間入りを果たした学校も多い。弘前学院聖愛(青森)、遊学館(石川)、創志学園(岡山)、英明(香川)などが挙げられる一方、不祥事を起こす野球部も増えてきた。 2012年に先輩から暴力を受けて大けがをした神村学園(鹿児島)、14年に下級生に対して恒常的ないじめが発覚した済美(愛媛)、22年に野球部の合宿所内で起きた集団暴行が発覚した聖カタリナ学園(愛媛)、そして今回の千葉学芸である。 この点について小倉はこう語る。 「女子高から男女共学になった学校というのは、『野球部を強化して甲子園出場を果たし、知名度を上げて多くの生徒に入学してもらいたい』という経営陣の思惑があるのと同時に、野球部にいる選手たちには、『勉強はいいから、野球だけはしっかりやってくれよ』というような言い方をしているんじゃないかと思うんです。 でも、それをよしとしてしまうと、それ以外のこと、たとえば日常の学校生活や勉強面についてなど、『本来高校生が大事にしなければならないこと』のほうがおろそかになってしまっている可能性が高い」

「野球ができればそれでいい」のか?

「私も関東一で監督に就任したときには、お世辞にも勉強ができる選手はほとんどいませんでした。それでもやっていいことと悪いことの分別はつけさせていましたし、いじめなどは言語道断、もってのほかでした。ですから野球以外のこと、『人の道から外れるようなことはしてはいけない』ということを、指導者が選手にいかに教え続けるかが大切だと思います。 繰り返しますが、どんなに野球がうまくたって、プロに入れるのはほんのひと握りの生徒だけ。ほとんどの選手は大学に進学したり、就職したりするんです。それにもかかわらず、『野球ができればそれでいい』という変な特権意識を持つことを容認してしまうと、その後の人生で苦労に苦労を重ねることになる。だからこそ、指導者は野球以外のことにも目を配る必要があると思うんです」 近年、千葉学芸は千葉県内でも強豪校の1つと位置づけられてきた。2021年春季千葉大会で優勝し、この年プロにも選手を輩出している。野球部で起きた一連の事件は到底許されるものではないが、学校側がどんな防止策をとっていくのか、今後の展開に注目していきたい。 <取材・文/小山宣宏>
スポーツジャーナリスト。高校野球やプロ野球を中心とした取材が多い。雑誌や書籍のほか、「文春オンライン」など多数のネットメディアでも執筆。著書に『コロナに翻弄された甲子園』(双葉社)
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