仕事

上智大ミスコン出身の元アナウンサーが“キャリア迷子”から司法書士事務所を開業するまで

競争に揉まれて意識した自分の“市場価値”

岡部茉佑 在学中から岡部さんは、生放送ラジオ番組「よんぱち 48hours 〜WEEKEND MEISTER〜」(TOKYO FM)のアシスタントMCや、ABEMA NEWSチャンネルのキャスターに抜擢。新人フリーアナウンサーとして活躍の場を広げていった。 「鈴木おさむさんがパーソナリティを務めるラジオ番組では、ゲストさんに聞く質問を考えたり、ニュースの原稿読みが多かったです。AbemaTVでは災害や事件、スポーツ結果などの速報を出す夜勤業務もやっていました。他のアナウンサーの方の代打で声が掛かることも多かったので、遊びの予定などは立てにくかったですね。  生活は夜勤があるぶん不規則でしたが、歩合給の芸能事務所が多いなか、私のいたところは非常に良心的で固定給だったので、待遇的にはとても恵まれていました」  しかし、アナウンサーとして活動を始めて2年ほど経った2017年末には事務所を退所。23歳にして自らアナウンサー業からあっさりと身を引く。 「ひと言で言えば、長く生き残っていく自信がなかったんです。当たり前の話なんですけど、いずれは世代交代する現実や、業界に揉まれて競争社会の熾烈さを痛感したというか。  若くて優秀なライバルがどんどん出てくるし、フリーよりも自局のアナウンサーを起用する流れも強い環境で、自分が現状以上に突き抜けられるのか不安でしたね。第二新卒として扱われる25歳前後という年齢も意識して決断しました」  30代からのキャリアに悩む女性アナが多いイメージは世間一般にもあるだろうが、岡部さんの転職先はリクルート社が展開する「ゼクシィ」の営業職。メディアやSNSで露出することもなく、裏方としてコンサル営業などの業務に従事したそうだ。 「アナウンサーとしての実力や経験があれば、セミナー講師や結婚式の司会などの需要は当然あると思うんです。でも、私は新卒の頃からフリーだし、アナウンサーとしての経験も浅い。だからこそ、自分の市場価値を上げて、後のキャリアが広がるような会社に第二新卒で入りたいと思いました」

誰とも被らない人材に

岡部茉佑 なぜ、そこから司法書士に? 「リクルートは“5年在籍したら長い”と言われるような会社で、自分で会社や副業をやっている方が多く、私も入社時から先のことは常に考えていました。私の性格的にも個人事業主として独立して働く方向で考えたんですが、私の母と叔父が不動産会社を営んでいる関係で比較的身近な職業だったことなどもあり、リクルートを2年で退職し、司法書士の試験勉強を始めました」  司法書士は年1回の試験の合格率が5%前後の難関資格。岡部さんは2回目の受験で合格したが、総勉強時間は1年半で2700時間に達したそうだ。ちなみに、司法書士の女性比率は2割に留まるという。  語弊を恐れず言えば、法曹関係の専門職の中でもかなりニッチな職という気もするのだが、それも織り込んだ上でのキャリアデザインだったようだ。 「今までの自分の経歴に法律という強みを掛け合わせたら、誰とも被らない人材になるだろうなと。学生時代に法律事務所でアルバイト経験があり、国家公務員を目指していたこともあるんですが、その頃から法律の勉強はわりと好きでしたね」
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「経験を余すことなく、無駄にしない」
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1988年生まれ道東出身、大学でミニコミ誌や商業誌のライターに。SPA! やサイゾー、キャリコネニュース、マイナビニュース、東洋経済オンラインなどでも執筆中。いろんな識者のお話をうかがったり、イベントにお邪魔したりするのが好き。毎月1日どこかで誰かと何かしら映画を観て飲む集会を開催。X(旧Twitter):@tsuitachiii

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