TBS『サンモニ』に30年間出演。“プライベートでは目立ちたくない”アナウンサーの現在
JR荻窪駅北口すぐにある荻窪教会通り商店街の一角に、そのブックカフェはある。店名は「BOOK CAFE+BAR COTOCOTO」。店主は、2023年3月末まで『サンデーモーニング』(TBS)に30年近く出演し、番組内のコーナー「風をよむ」などで広く知られたアナウンサーの橋谷能理子氏。同年11月、大学時代の友人と2人でオープンさせたばかりの店だ。
店名の「COTOCOTO」は、「言葉と言葉の間をじっくり楽しむ」、そして「読む“こと”、聴く“こと”、飲む“こと”、色々な“こと”を楽しみたい」という意味が込められている。
設置された書棚には「人生に迷っているあなたに」「歴史にはまりたい人に」「映画VS原作」など、来店者のニーズをさり気なくまとめたコーナーも存在する。
共同経営する友人とは「学生時代のバンド仲間」。現在も音楽を愛する橋谷氏だが、音楽以外に熱中したものこそ読書だった。
「母が言うには、『あれ、姿が見えないな』と思うとタンスの上によじ登って、そこで絵本を読んでいる子どもだったそうです。当時の感覚を鮮明には思い出せませんが、本の世界にどっぷり浸かっていくのが心地よかったのではないでしょうか。高いところに登って、自分を邪魔するものがない環境でじっくりと書籍に向き合いたかったのかもしれません」
幼少期以降も読書熱は冷めないどころか、むしろジャンルを横断した読書を楽しんだ。現在でも尚、“読書愛”は止まらない。
「中学生時代は住んでいた地域より遠い学校へ越境入学したこともあり、他の人よりも通学時間が長かったんです。1回自宅に帰ってから遊びに出かける、というのも難しいので、私にとって読書は常に身近な娯楽でした。通学の際にはいつも単行本を抱えていましたね。大人になってからも、電車の中で読む本を持ってき忘れてしまったときは『うわ、しまった』と思います。一貫して好きな作家は伊坂幸太郎先生ですが、その時期によって熱中するジャンルが違います。20代〜30代にかけて、SF小説を熱心に読んだ時期がありました。40代は浅田次郎先生を愛読して、『蒼穹の昴』を読破しました。また荻原浩先生はさまざまなジャンルを書き分けられる名手だと思いますが、優しい作風が好みで、泣きたい気分のときは手に取る本があります」
女性のアナウンサー、それも長寿番組に起用され続ける才媛ともなれば、さぞかし華々しい人生だろうと否が応でも想像してしまう。だが橋谷氏は即座に首を振る。
「中学2年生くらいまでの私は、クラスでもいるかいないか分からないくらいの、目立たない学生でした。それこそ、教室の隅っこで読書をしているような子だったと思います。ある日突然、それまでクラス委員をやっていた関係で、担任の先生から『生徒会役員選挙に出てみないか』と言われて、全校生徒の前で演説をすることになってしまいました。当然、原稿を一生懸命作って臨みます。これまで夢にも自分がそんなことをすると思っていなかったのに、蓋を開けてみたら当選。そのときくらいから、『人に伝える』ということの大切さを知ったように思います。ただ、アナウンサーとして勤めた現在でもまだ、仕事以外ではわりと地味に生きています(笑)。本音を言えば、プライベートでは目立ちたくないんです」
「タンスの上で絵本を読んでいる子ども」だった
「人に伝える」ことを知った生徒会選挙
ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki
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【イベント情報】 2024年1月14日(日)15時~と17時30分~の2回公演で、年明け第一弾の朗読ライブを開催します。チェロ奏者の新井みつこさんとバイオリン奏者の五十嵐歩美さんとの共演です。イベントの詳細、ご予約についてはCOTOCOTOホームページをご覧ください。
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