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「肉体の密度がウラン以上」ある巨漢のおっさん。絶体絶命の窮地で見せたミッションインポッシブル

肉体密度がウラン以上の男

 つい最近もこんな事件があった。  知り合いのおっさんのなかでもかなり巨漢なことで知られる唐島さんという人がいる。身長はそこまで高くないけど、体重はかなりのもので、体の体積に比べて異常に体重があるものだから、誰かが試算したところによると、肉体の密度がウランより高くないと成り立たない、という体を持つ男だ。  そんな唐島さんだから、しょっちゅう足が痛いと言っているし、ちょっとした段差を乗り越えるのも苦労している。一時期は本当に足の関節が悪くなったようで、車椅子で競馬場に出入りしていたくらいだ。ほぼトリッキーな動きはできず、ゾウのようにゆったりと動く、まあ、おっさんになると体のどこかで不調をきたすものなので珍しいことではないけど、唐島さんはちょっと度を越えていた。  そんな彼がかなりアクロバティックに動いた事件があった。  その日、唐島さんは大きめの駅の構内を歩いていた。やはり足が痛いらしく、足を引きずりながら移動していると、めちゃくちゃにお腹が痛くなったらしい。これは完全に漏れ出るやつだと察知し、急いでトイレを探すものの、残念ながら大きめの駅のトイレは常に混んでいる。うんこ待ちのとんでもない行列が通路を飛び越えて外にまで伸びていたそうだ。

無事にウンコを吐き出したと思いきや、想像を絶する試練が……

 このまま並んでいたのでは完全に漏れる。そう直感した唐島さんは駅直結の商業施設に移動した。このあたりはさすがの判断だ。ただし、足を引きずりながらなのでそのスピードは遅く、かなり際どい感じだったらしい。  商業施設のエスカレーターを3階、4階と上がっていく。上の階に行くほどトイレが空いている可能性が高いからだ。そしてついに、誰も並んでいない空いたトイレを発見し、我先にと駆け込んだ。  完全無人のトイレに駆け込み、いちばん奥の個室ブースへ。そのまま一気に排出する。さすがウランより密度が高い男、かなりの量のソレが排出されたらしい。絶体絶命のピンチから圧倒的な解放、至福の時。唐島さんは恍惚の表情を見せた。その時、事件が起きた。 「ゲハハハハハハ、そこで言ってやったわけよ」 「あれでしょ、性のウーバーって言ってやったんでしょ」  大きな声で会話しながら突如として2人組がトイレに入ってきた。会話の声は大きく、なにより内容が「性のウーバー」というよく分からない内容だったのだけど、それ以上に唐島さんを困惑させる事実があった。  その声の主、おばちゃんのものなのだ。たまにおばちゃんみたいな声を出すおっさんがいないわけではないけど、殴りこんできたその声は確かにおばちゃんのものだった。
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必死で記憶を辿る、絶体絶命の唐島
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テキストサイト管理人。初代管理サイト「Numeri」で発表した悪質業者や援助交際女子高生と対峙する「対決シリーズ」が話題となり、以降さまざまな媒体に寄稿。発表する記事のほとんどで伝説的バズを生み出す。本連載と同名の処女作「おっさんは二度死ぬ」(扶桑社刊)が発売中。3月28日に、自身の文章術を綴った「文章で伝えるときにいちばん大切なものは、感情である 読みたくなる文章の書き方29の掟(アスコム)」が発売。twitter(@pato_numeri

pato「おっさんは二度死ぬ」

“全てのおっさんは、いつか二度死ぬ。それは避けようのないことだ"――


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