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“偉大なる”水原一平にひれ伏すしかない、そんな気持ちにさせられるおっさんたちの不幸自慢大会

そんな徳山さんに召集をかけられておっさんたちが集まった

a 先日、そんな徳山さんから召集がかかった。場末の居酒屋に数人の競艇好きが集められることとなった。こうなると、だいたい、徳山さんの「ギャンブルでいかに負けたか」の話から始まり、俺より負けたやつはその話をしてくれと依頼されるのだ。それで徳山さんは俺より不幸なやつがいると安心してまたギャンブルにのめり込むのだ。そのための儀式のような飲み会だ。  しかしながら、僕らが背負っていた役割はすでに水原氏が担ってくれている。既に僕らの数万の負けでは満足しない高みの話になっている。もう僕らは用済みだ。それなのになぜ召集されたのか、疑問に思いながら居酒屋へと赴いた。 「もうギャンブルは諦めた。水谷より負けることは難しい」  だれも「水原です」とは突っ込まなくなっていた。それはさすがに62億も負けるのは難しいという主張だった。そりゃそうだ。 「ただ、俺より不幸な話を聞きたい。それも風俗の不幸話だ」  どうやら徳山さん、通っていた風俗店を出禁にされてしまったらしい。なぜ出禁になったのかは詳しく話したがらなかったけれども、どうやら女の子への支払いに二千円札を使ったところ、19歳巨乳の女の子が二千円札の存在を知らず、偽札と疑われてちょっとした騒ぎになったらしい。そのドサクサで以前から迷惑行為が多かったので出禁になったようだ。  とても落ち込んだ徳山さんだけれども、それならギャンブルの時のように自分より負けているやつ、自分より不幸なやつの話を聞いて安心したくなったようだ。

風俗の不幸話自慢が始まった

「さあ、二千円札を使って出禁になった俺より不幸な風俗話を聞かせてくれ」  威厳すら感じるほどにドンと構えて言い放つ徳山さん。 「でも、そんな風俗の不幸話なんてポンポン出てくるもんじゃないだろ」  僕はそう考えていた。ギャンブルでの負けと違って風俗の不幸話はそう多くないはずだ。しかもあったとしても人に話すことは恥ずかしい。きっと徳山さんが安心するようなエピソードが出てくるはずがない。 「この間、けっこうお金に余裕があったんでオプションを付けたんですよ」  即座に口火を切ったのは釜石さんだった。いや、あるんかい。  釜石さん、けっこうお金に余裕があったので、風俗嬢を呼んで、以前から気になっていた「パンティ持ち帰り」のオプションをつけようと企んだらしい。こういうのはだいたいオプションの中でも高額な設定のものだ。ただし、女のコが普段から使用している下着を持ち帰るわけではなく、だいたいは店が用意したチープな下着を持ち帰ることになるらしい。だから事前に申し出る必要があるそうだ。 「ただね、電話でパンティ持ち帰りでとオーダーしたら、明らかに受付の男が焦っていたんだ」  パンティ持ち帰りをオーダーする客が少ないのか、ま、まさか、これをオーダーされるとは!みたいな焦りが伝わってきたようだ。なにやらバタバタ音がしていたので、もしかしたら持ち帰り用のチープなパンティのストックが見つからなかったんじゃないか、釜石さんがそう思った。
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しかし、風俗嬢がはいていた下着は何と……
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テキストサイト管理人。初代管理サイト「Numeri」で発表した悪質業者や援助交際女子高生と対峙する「対決シリーズ」が話題となり、以降さまざまな媒体に寄稿。発表する記事のほとんどで伝説的バズを生み出す。本連載と同名の処女作「おっさんは二度死ぬ」(扶桑社刊)が発売中。3月28日に、自身の文章術を綴った「文章で伝えるときにいちばん大切なものは、感情である 読みたくなる文章の書き方29の掟(アスコム)」が発売。twitter(@pato_numeri

pato「おっさんは二度死ぬ」

“全てのおっさんは、いつか二度死ぬ。それは避けようのないことだ"――


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