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CoCo壱番屋、多店舗展開で成功。22歳バイト出身社長も生んだ“独自の制度”とは

昭和は「我が家のカレー」が当たり前

 日本の国民食のひとつであるカレー。トロッとしたカレールーに肉(牛・豚・鶏)・玉ねぎ・にんじん・じゃがいもを入れて煮込んだものが基本である。そもそも、カレーは家庭で簡単に作れ、昔は家庭で食べるものといったイメージがあり、それぞれの家庭に「我が家のカレー」があった。昭和は特にそうだったものである。  市販のカレールーを使いながらも、家庭独自で味噌・ウスターソース・赤ワインなどの隠し味をつけ足し、バランスよく調和されると、懐かしい我が家ならではの味になる。時々、無性に食べたくなるのが、人に自慢したくなるのが、他にはない「我が家のカレー」ではなかろうか。  また、経済成長に伴い、共稼ぎ世帯が増えるといった社会の変化を背景に、忙しい中での家庭の食事は簡便化ニーズが高くなる。そのため、まとめづくりができて、「冷蔵庫に保存しておけば、いつでも食べられる」といった利便性に対応したのも、カレーが普及した要因である。  寝かせれば寝かしただけ深い味わいのカレーになってより美味しさが増したものであった。

カレー専門店の多店舗展開は不可能?

CoCo壱番屋

俳優の山田裕貴がイメージキャラクター

 その後、核家族化など世帯人数の減少から、家で作らずレトルトカレーで済ませるという家庭が増えてきた。メーカーが開発し、販売するのは、ボリュームのある市場を狙った標準味のレトルトカレーが多いものである。  その標準的なレトルトカレーに食べ慣れた人たちが増えてきたのもカレー専門店が増えた要因であろう。あまりこだわると、人には好みがあるから、市場を限定してしまうし、その味が好みだったら、とことん食べまくった上で飽きがきて全く食べなくなるのも消費特性である。  あえてカレーを飽きが来なくて、毎日でも食べれる味にして、来店頻度を高めた上で、辛さや豊富なトッピングを用意し、顧客のほうでカスタマイズさせる工夫が受け入れられたのがCoCo壱番屋であろう。   多店舗展開をするなら標準的な味でボリュームゾーンであるマス市場に投入するのが一般的である。それぞれが持つ個性豊かな家庭のカレーをそれぞれの人たちが持つなかで、標準的なカレーでのチェーン展開は難しいというのは、外食業界ではよく言われていた。それを覆し、国内1200店まで大規模化したのがCoCo壱番屋である。
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CoCo壱番屋の強みは何だったのか?
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飲食店支援専門の中小企業診断士・行政書士。自らも調理師免許を有し、過去には飲食店を経営。現在は中村コンサルタント事務所代表として後継者問題など、事業承継対策にも力を入れている。X(旧ツイッター):@kaisyasindan
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