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「バラエティ番組はくだらない」は至極真っ当な主張。小泉今日子が“国民の相棒”であり続ける理由

ある種、特例的な反響だった阿部サダヲ主演ドラマ『不適切にもほどがある!』(TBS系)第8話に本人役でチョロっと顔を出す。みんなが口々にいう、うわぁ「キョンキョン!」だと。 チョロっとなのにガツンとくる。そんなことができてしまうのは小泉今日子くらいしかいないよな。ほんと。ドラマの外でも「くだらないから」という一撃で話題になってしまう。その存在自体が、今の時代を生きるための勇気の代名詞(アイドル)ではないのか。 イケメン研究をライフワークとする“イケメン・サーチャー”こと、コラムニスト・加賀谷健が、“国民の相棒”小泉今日子を読み解く。
小泉今日子

©産経新聞

「背筋がはりつめるカッコよさ」が

この間、シドニー・ルメット監督がアガサ・クリスティの原作を映画化した『オリエント急行殺人事件』(1974年)をテレビで見ていたら、思わず、背筋がピンとなる瞬間があった。 殺人事件が起こった列車内、名探偵ポアロ(アルバート・フィニー)が乗客を事情聴取していると、相手のイタリア人がパッと横を向く。隣車両から殺気を帯びた眼差しの女性がガラス戸越しに見つめていたのだ。手にはナイフ。血がついている。ポアロたちがいる車両に入ってくる気配はない。ちょっと慌てたポアロの方から出ていく。同作中、唯一ポアロを出向かせたのが、この女性だ。演じているのは、ローレン・バコール。恐ろしいたたずまいだもの。ハリウッド映画の黄金期を代表するバコールを前にしたら役柄を超えて誰だってそうなるか。 ローレン・バコールの魅力とは単に、「ザ・ルック」と呼ばれた上目遣いの眼差しが象徴するクールビューティーなカッコよさだけにあるのではなく、あらゆる要素が発酵して醸すカッコよさだ。バコール以外にそんな存在はいないよなと高をくくりつつ、ちょっと乱暴かもしれないけど、現在の小泉今日子を重ねてみたくなる。小泉の場合、バコールよりもっと踏み込んで背筋がはりつめる気がするのだ。

至極真っ当な「くだらない」発言

背筋がピンからの「敬礼!」、続いてだんだん背筋がザワァみたいな号令的存在感で、完全に白旗をあげたくなるカッコよさがある。そう強く感じる小泉の発言が話題を集めたのは今年初めのこと。 『文藝春秋』(2024年2月号)に掲載された有働由美子との対談である。バラエティ番組に出演しない理由を聞かれた小泉が「くだらないから」とばっさり言い切ったのだ。「ワーオ!」と発する有働の驚きが文字からでも伝わる。でもこの発言だけがひとり歩きするかたちになってしまった。ある著名な落語家にいたってはとんでもなくトンチンカンなポストをX上に投稿(嗚呼、ため息)。 小泉がバラエティ番組を「くだらない」と一刀両断するからにはちゃんと文脈がある。近田春夫とパーソナリティを務めるラジオ番組『TOKYO M.A.A.D SPIN』(J-WAVE、1月27日放送)で、同発言に言及。例えばクイズ番組などで優勝した芸能人が景品で高級な牛肉とかもらうけど、お金があるんだからいらんだろうと。それを嬉々として放送するバラエティ番組が「くだらない」んだと。 そう、この発言自体、至極真っ当な指摘なのである。嬉々としてないで、むしろテレビ業界の現状況を危機としてくれよと普通に思ってしまう。すごく単純な道理だ。
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「くだらない」発言を快く裏書きするパンチライン
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コラムニスト・音楽企画プロデューサー。クラシック音楽を専門とするプロダクションでR&B部門を立ち上げ、企画プロデュースの傍ら、大学時代から夢中の「イケメンと映画」をテーマにコラムを執筆。最近では解説番組出演の他、ドラマの脚本を書いている。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。Twitter:@1895cu

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