エンタメ

「バラエティ番組はくだらない」は至極真っ当な主張。小泉今日子が“国民の相棒”であり続ける理由

「くだらない」発言を快く裏書きするパンチライン

アラサー世代のぼくも含め、5thシングル「まっ赤な女の子」で頭角を現し、1985年の「なんてったってアイドル」が大ヒットした当時をリアルタイムで知らない世代の目には、もしかするとアイドルのイメージより“政治的”発言を辞さない芸能人として映るかもしれない。 なんでだか芸能人がソーシャルでポリティカルな発言をするとすぐに後ろ指を差される。ぼくなんかはむしろ公人にどんどん政治的発言を求めたいけれど、いやはやどういう原理なんだろう。『TOKYO M.A.A.D SPIN』では続けて、音楽プロデューサー松尾潔の快著『おれの歌を止めるな ジャニーズ問題とエンターテインメントの未来』が紹介されたが、その松尾さんの出版記念イベント(和田静香との鼎談形式、3月15日)に出演したときの発言もすこぶる気持ちよかった。ちょっと長いが、引用しておく。 「怒りとか怒ることとか、思ってることを言うとか、声をあげるっていうことに対して、すごく否定的に捉えられちゃうことが多くて、でも、こんなおかしな世の中になってて、怒らない方がおかしいと私は普通に思うんだけど、怒ってると、なんか、あぁ売れなくなったから左に寄りやがったみたいなこと書かれたりして、まっすぐ立ってますけどみたいな」 もうほんとに最高。さわやかで風通しがよく、それでいて強烈で痛快なチャーミング。「くだらない」発言を快く裏書きするパンチラインだ。

『最後から二番目の恋』での愛すべき相棒関係

再び、ローレン・バコールに話を戻すと、フランスの映画監督フランソワ・トリュフォーはバコールをこう評している。曰く、「ローレン・バコールは、ボガートの情婦でもなければ、妻でもなく、ガール・フレンドでもない。彼女は彼の相棒なのだ」(「ハンフリー・ボガートの肖像」)と。 バコールは19歳で出演したデビュー作『脱出』(1944年)で初共演した名優ハンフリー・ボガートと1945年に結婚した。ハリウッドきってのおしどり夫婦として未だに語り草のふたりを「相棒」と言い切るトリュフォーの着眼には恐れ入る。そしてこれまた小泉今日子にも適用されるのだ。 小泉の相手とは、中井貴一である。2012年に放送された『最後から二番目の恋』(フジテレビ系)での愛すべき相棒関係は、テレビドラマ史に深く記憶されているベストオブベストコンビ。すでに放送終了から10年以上経っているのに、年々物語世界の鮮やかな深みを増している気がする。
次のページ
“国民の相棒”の平衡感覚を頼りに
1
2
3
コラムニスト・音楽企画プロデューサー。クラシック音楽を専門とするプロダクションでR&B部門を立ち上げ、企画プロデュースの傍ら、大学時代から夢中の「イケメンと映画」をテーマにコラムを執筆。最近では解説番組出演の他、ドラマの脚本を書いている。日本大学芸術学部映画学科監督コース卒業。Twitter:@1895cu

記事一覧へ