プログラミング教育の教材としての側面も
直感的に操作できる『Roblox Studio』でのゲーム制作
それでは、『Roblox』はどうしてここまで人気となったのでしょうか。その理由を3つ挙げていきたいと思います。
(1)プレイするまでのハードルの低さ
なんといっても『Roblox』の魅力は、無料で手軽に遊べること。特別なハードがなくてもタブレットやスマホなど、比較的低スペックなデバイスにもインストールでき、しかも友達とチャットしながら遊べます(異なるハード間のクロスプレイにも対応)。何をすればいいか直感的にわかるタイトルが多く、プレイする前の心理的な壁が低いのも特徴です。
(2)人気ゲーム実況者の影響
YouTubeのゲーム実況動画で小学生に支持されている『Roblox』。「まいぜんシスターズ」や「ちろぴの」など、小学生人気ランキング上位のゲーム実況者が、『Roblox』を積極的にプレイしています。子どもたちがそれを見て、真似してプレイするという流れで、YouTubeのゲーム実況動画が『Roblox』の人気を支えています。
(3)プログラミング教育への活用
プログラミング言語を知らなくても使える公式ツールによって、誰でもゲーム制作ができるのも『Roblox』の特徴のひとつ。これがプログラミング教育の一環として教育現場からも注目を集めています。実際に『Roblox』を教材に使う塾も出てきています。教育的というイメージが、ゲームが持つネガティブな印象を薄めていると言えそうです。
5月9日に発表されたRoblox社の決算は、2024年通期の売上高見通しを従来からやや下回る40億~41億ドルに修正し、前年比約40%増ではあるものの、市場の高い期待には応えられない数字でした。とはいえ、日本やインドでは今後も大きな成長が見込まれています。
未配信のNintendo Switchにも近々配信されるという噂もあり、実現すれば日本でもさらなる大ブームが起こるかもしれません。2023年6月には電通がRoblox社とパートナーシップ契約を締結。今年3月には住友商事がメタバースコンテンツの提供を開始するなど、日本の大手企業の動きも活発化しています。
この2月から東京都が観光プロモーションのために『Roblox』で公開したメタバース空間『HELLO! TOKYO FRIENDS』
このように『Roblox』がさらに存在感を増していくと、既存のハードホルダーの脅威になるかもしれません。コンシューマゲームのタイトルと、『Roblox』でアップされているカジュアルなタイトルでは当然クオリティは桁違いですが、1日のゲーム時間を奪い合うと考えれば、強力なライバルと言えるでしょう。
Nintendo Switchの後継機に関する情報はベールに包まれたままですが、『Roblox』のように簡単なツールでユーザーがゲームを作ってアップし、そこに世界中のプレイヤーが集まってコミュニケーションする……そうしたスタイルをサポートするハードになる可能性は大いにあります。
今後、日本で『Roblox』がどこまで浸透するのか、それに対してハードホルダーはどのような反応を見せるのか。「ゲーム実況」「VTuber」「メタバース」「AI翻訳」などのキーワードとも絡み、大きな動きになりそうです。<文/卯月 鮎>
ゲーム雑誌・アニメ雑誌の編集を経て独立。ゲーム紹介やコラム、書評を中心にフリーで活動している。雑誌連載をまとめた著作『
はじめてのファミコン~なつかしゲーム子ども実験室~』(マイクロマガジン社)はゲーム実況の先駆けという声も