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闇バイトに手を出したと思われたおっさんを皆で見守った結果、悲しいオチが待っていた

やはり世の中においしい仕事なんてないのだ

「実家の面々も、この縁談は大切だ。会わせたくない。となったらしく、じゃあ、5万円渡して箱を運ばせよう。その間に婚約者を連れてきなさい。となったらしい。どうせ、運んだあとは五万円でスロットいくからすぐには帰ってこないという計算までされていた」 「そんな悲しいことありますか」  婚約者に会わせたくないからお母さんが5万円のこづかいを渡して追い出しただけじゃないか。  さらに悲しいことに、お母さんの計算通り、親戚の家に運んだ直後にその5万円でスロットに直行して「スマスロかぐや様は告らせたい」を打ち、全部のまれたらしい。なるほど、こんなクズ、ちょっと会わせられないわ。  結局、浅井さんが手を染めたのは闇バイトではなかったけど、これはこれで別ベクトルで悲しいバイトに手を染めていた。  数日後に、浅井さんに聞いてみた。弟の婚約者に会わせられないって5万円もらってスマスロかぐや様を打ってそれでいんですか?ちゃんと働きましょうよ。浅井さんからはすぐに返事が返ってきた。 「俺が会わないことで縁談がスムーズにいくならいくらでも箱を運ぶぜ。これはもう弟の結婚のためのバイト、光バイトだ」 「浅井さん……」 「そして結婚式までにはちゃんと就職してえな。結婚式には呼ばれたいし、立派な兄として出席したい。弟と新婦が入刀したケーキを食べさせ会うやつあるじゃん。あれを見たい。あれなんていうんだっけ」 「ファーストバイトですか?」 「そう、光バイトでファーストバイト、がはははは」  微妙に上手い事こといってんじゃないよ。  ということで、浅井さんは闇バイトに手を出したわけではなかった。今回のケースは実家が太いゆえにちょっと家を空けさせるためにお母さんから5万円もらえたケースだけれども、本来はどんなことはありえないので、そういう“おいしい仕事”はない、と認識をもって仕事を探すべきである。 <ロゴ/薊>
テキストサイト管理人。初代管理サイト「Numeri」で発表した悪質業者や援助交際女子高生と対峙する「対決シリーズ」が話題となり、以降さまざまな媒体に寄稿。発表する記事のほとんどで伝説的バズを生み出す。本連載と同名の処女作「おっさんは二度死ぬ」(扶桑社刊)が発売中。3月28日に、自身の文章術を綴った「文章で伝えるときにいちばん大切なものは、感情である 読みたくなる文章の書き方29の掟(アスコム)」が発売。twitter(@pato_numeri

pato「おっさんは二度死ぬ」

“全てのおっさんは、いつか二度死ぬ。それは避けようのないことだ"――

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