エンタメ

江戸時代の遊女にまつわる“間違ったイメージ”とは? 悲劇だけではなかった/『禁断の江戸史』より

日本の遊女は軽蔑すべき仕事ではない

芸妓 また、幕末に来日したフランスの海軍士官・スエンソンは、次のように述べている。 「日本のゲーコは、ほかの国の娼婦とはちがい、自分が堕落しているという意識を持っていないのが長所である。  日本人の概念からいえば、ゲーコの仕事はほかの人間と同じくパンを得るための一手段にすぎず、〔西洋の〕一部の著作家が主張するように、尊敬されるべき仕事ではないにしろ、日本人の道徳、いや不道徳観念からいって、少なくとも軽蔑すべき仕事ではない。  子供を養えない貧しい家庭は、金銭を受け取るのと引きかえに子供たちを茶屋の主人に預けても別に恥じ入ったりするようなことはないし、家にいるより子供たちがいいものを食べられ、いいものを着られると確信している」 「ゲーコの多くは、前もって定められた年数を茶屋で過ごしさえすれば契約が切れ、誰にも妨げられずに家にもどることができて、まともな結婚さえ可能である」(長島要一訳『江戸幕末滞在記』講談社学術文庫)  河合先生が最後に次のように語る。 「これらの文献からも、江戸時代の遊女は差別されることもなく、完全な自由を取り戻したら、普通の結婚をすることがわかります。しかし、このように、きちんと日本の遊女文化を理解していた外国人がいたのはまことに興味深いことでですね」 <文/河合敦>
―[禁断の江戸史]―
歴史作家、多摩大学客員教授、早稲田大学非常勤講師。 1965 年、東京都生まれ。青山学院大学文学部史学科卒業。早稲田大学大学院博士課程単位取得満期退学。歴史書籍の執筆、監修のほか、講演やテレビ出演も精力的にこなす。『教科書に載せたい日本史、載らない日本史』『日本史の裏側』『殿様は「明治」をどう生きたのか』シリーズ(小社刊)、『歴史の真相が見えてくる 旅する日本史』(青春新書)、『絵と写真でわかる へぇ~ ! びっくり! 日本史探検』(祥伝社黄金文庫)など著書多数。初の小説『窮鼠の一矢』(新泉社)を2017 年に上梓。
1
2
3
【関連キーワードから記事を探す】