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焼肉食べ放題店の元経営者が明かす“裏事情”。注文されると「苦しい/嬉しい」メニューとは――ニュース傑作選

今後の焼肉店はどうなるのか?

ワンカルビ

筆者もワンカルビを満喫

 一般的に、焼肉業態は、初期投資額は他の業態と比較すると高額ですが、客単価が高く利益率が高いので、投資回収が早めです。この特性を踏まえたうえで適切な戦略を策定したお店が生き残るのだろうと思います。  現在は、コスパ重視の焼肉チェーンの多くが、タッチパネルのオーダーシステム・配膳ロボット・セルフレジなどを活用し、省人化投資を競い合っている状態です。普通、あまり追加すると客側も遠慮して店員さんに追加をお願いしにくいものですが、タッチパネルによる追加と配膳ロボットによる商品提供で、店員さんを介さずに好きなだけ食べられるのは、店は大変ですが、お客さんにとっては嬉しいことですね。  筆者が経営している時、他の焼肉店でアルバイトをしていた学生を採用して聞いた話ですが、その店では店員を呼んで追加オーダーをする際、追加注文を重ねると要注意テーブルに指定され、それを従業員間で共有して、それ相当の対策を講じていたと聞きました。

筆者が在籍したチェーン店店長の口ぐせは

 確かに、店によっては、注文し過ぎると、徐々に店員が近寄らなくなり、呼んでも、なかなか来てくれなくなる経験をしたことがありますし、来ても明らかに表情に愛想がなくなっているのが分かる場合があります。最初のうちは、店員のほうから「お替りはいかがですか?」と推奨されるのですが、面白いものです。裏でこそこそ小細工をせずに商売は正直にやらないといけませんね。  筆者が在籍していたチェーン店の社長は「アルバイトの口に気をつけなさい。どこで店の噂が広まるか分からないから」と、日頃から口酸っぱく言われており、絶対に変なところは見せないようにしていました。特に今は、SNSで投稿されたら、瞬時に拡散され、すぐに浸透します。店にとっては致命傷になり、外食は変なイメージが定着すると存続の危機に陥りますから注意が必要ですね。  なかなか参入障壁をつくるのは難しい中で、飽きやすく惚れやすいといった成熟社会の日本の消費特性で、業態の陳腐化サイクルも早いです。顧客ニーズに合致し、競合他店の商品では味わえない自店ならではの価値を提供するバリュー・プロポジション(顧客提供価値)を徹底して訴求していかねばなりません。顧客目線のマーケティングがより求められる現在、自店のファンを固定化し、来店頻度や一組当たりの客数を増やす仕掛けをして持続的な競争優位店を確立し、地域におけるオンリーワンを目指してほしいものです。 <TEXT/中村清志>
飲食店支援専門の中小企業診断士・行政書士。自らも調理師免許を有し、過去には飲食店を経営。現在は中村コンサルタント事務所代表として後継者問題など、事業承継対策にも力を入れている。X(旧ツイッター):@kaisyasindan
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