今こそ語る「CMトイレ発言」の真相
ーーこうして順を追って聞いていくと、少しずつバブルな匂いが漂ってきました。
乱:あるときなんか朝7時に集合と言われて集合場所に向かったら、ディレクターから「まだ何を撮るか決まってない」と言われて。
「湘南に行こうと思うんですけど、とりあえず海と乱さんがあればなんとかなるもんですよ」と。そんなリポートでも視聴率12%くらい取ってしまっていた。そりゃみんないい気になってイケイケになりますよね。
ーーそんな空気感のなか、例の発言が飛び出したと。
乱:これはちょっと気を引き締めないといけないと自分のなかで思っていたのですが、1997年8月の放送で「風俗の裏技」というリポートを流す前に、気合を入れるつもりで
「今日は大変なことが起こりますよ。みなさん心して見てくださいね。これからビデオを録る人はビデオを録って、親戚に電話をかける人は電話をかけていただいて、トイレに行きたいという方がいらっしゃったら行っても構いませんよ」
ってCMの前に言ってしまったんです。
ーー親戚に電話、で止まっていれば問題にはならなかったかもしれませんね。
乱:言った瞬間「あ、ちょっとマズかったかな」と思って、プロデューサーに「CM明けたら『すみません!僕はCM大好きです!』って言いましょうか」と提案したけど、「大丈夫だよ。乱ちゃんのことだからシャレで済ましてるよ」って言うからその日はそのまま行って。

「CM明けに土下座しようとしたが止められた」という
そしたら次の日の夕刊ですよ。読売、朝日、毎日、産経……主要4紙全部に記事が載っていて。「テレ朝、また失態」という見出しで。
ーーすっかり話が大きくなって。
乱:それなのに次の週から休みもらって家族でグアムに行っちゃったんです。
ーーえっ!?
乱:ホテルのフロントで他の宿泊客から「乱さん、あんたこんなところにいていいの? 大変なことになってるよ!」と言われて。帰国したらテレ朝から呼び出されて「しばらく休んでください」と。それで次のクールから決まっていた仕事も全部なくなりました。
ーー周りの人たちの反応はどうだったんですか。
乱:もう犯罪者か重病人の扱いですよね。こっちとしては「大丈夫?」って聞かれてもねぇ……という感じですし。
ーー乱さんとしてはいつものノリの一環で他意はなかった?
乱:全然ありませんよ。風俗リポートの前に「この後ですよ。ティッシュは用意してますか?」って言うようなノリでした。

1996年『トゥナイト2』グアムで撮影時の写真
ーー仕事が急に途絶えて生活に変化は。
乱:映画会社から毎週のように送られていた試写状が届かなくなったくらいで、水道橋博士とか伊集院光くんが雑誌やラジオで「CMのことなら乱一世に聞け!」「それでは乱さん、CMです!」ってイジってくれたりしたので、それは気持ち的に助かりましたけど。
ーー具体的にどれくらい月収が減ったんですか?
乱:レギュラーが『噂の!東京マガジン』だけになったから、300万円くらいは一気に減りました。さすがにまだ子どもが小さかったので、事務所の社長に頼んで給料制にしてもらったのを覚えてます。
ーー自分の発言が招いたとはいえ、釈然としない気持ちはありましたか。
乱:いや、それはなかったです。でも、テレビに復帰することはもうないだろうな、とはなんとなく思ってました。
『トゥナイト』というベースがなくなった以上、そこから派生していただいた仕事がなくなるのは当然のことだし、それだけの話ですよ。精神的に追い詰められるとか、どうしようっていう不安はありませんでしたね。