2月1日から“1400円”に値上げ…QBハウスは“1000円カット市場”で今や割高。勝負を左右する「価格以外の要素」
中小企業コンサルタントの不破聡と申します。大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、「有名企業の知られざる一面」を掘り下げてお伝えしていきます。
“1000円カット”業態の最大手、QBハウスが2月1日にカット料金を1350円から1400円に値上げします。人件費の高騰などで価格改定を余義なくされ、今や価格はかつての1.4倍になりました。
QBハウスはしばらく人材不足で店舗数は縮小していましたが、今期は増加へと転じる見込み。値上げとの相乗効果によって収益性が高まる未来も見えてきました。
QBハウスを運営するキュービーネットホールディングスにおける、2022年8月の国内店舗数は591で、2024年8月は561。2年ほどで30店舗の純減となりました。店舗縮小の主要因になっていたのが人材不足。
キュービーネットは2023年6月期の国内正社員の退職率が10.6%となり、前期から2.2ポイント増加しました。しかもこの時期、コロナ禍からの経済の回復が鮮明になってヘアカット需要が急増。店舗の混雑状況が深刻化しました。一方、人員が不足していたためにカット席の総稼働席数が前年比で4%程度減少してしまったのです。
人員不足による機会損失が生じていました。
キュービーネットの退職率が増加した背景の一つに、理容師・美容師の賃金水準の上昇があるでしょう。厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」によると、2023年の理容師・美容師の所定内給与額は30.5万円。所定内給与額とは、決まって支給された6月分の現金給与額から、残業手当などを差し引いたものです。2022年は25.9万円でした。1.2倍に急増したのです。
なお、全産業での上昇率は2.1%ほど。ヘアカットの需要増で理容師・美容師の市場価値が高まった様子がわかります。ある程度の技術力を持っている人にとって、好待遇の会社や店舗へと移るインセンティブが高まった時期でした。
この時期のキュービーネットは戦略的な出店の抑制と退店を進め、ベースアップなどの待遇改善を行って課題解決を図りました。
2023年の需要急増とともに退職率が大幅に上昇
人員不足の解消を図るために…
フリーライター。大企業から中小企業まで幅広く経営支援を行った経験を活かし、経済や金融に関連する記事を執筆中。得意領域は外食、ホテル、映画・ゲームなどエンターテインメント業界
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