更新日:2025年02月21日 18:07
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「全裸の客に激怒されていた」ラブホ清掃の同僚が失踪し、警察沙汰になった“まさかの理由”

全裸のおじさんに激怒されていた

近くのオトナのお店が30分5000円の特大セールをしていて、部屋は今までにない回転率で回っていた。いつもなら一部屋10分で済ます清掃を8分程度に短縮し、ひたすら店からの要請に応え続けること数時間。ローズが目を白黒させながら「お兄ちゃん、手分けしよう」と言い出した。清掃漏れを減らすために二人一組で清掃を進めるのが会社の定める基本スタイルだが、確かにスピードを重視して収益性を上げなければいけないこの場面では仕方がない。1階と2階を僕が、3階と4階をローズが担当することにし、それぞれ部屋を清掃し続けた。 そうして忙しく清掃をこなしながらしばらく経った頃、上の階から客の怒号が響いてきた。壁が薄いからこのまま怒号が響き続けると他の客室からのクレームになりかねない。やむを得ず清掃を中断し、声のする3階に向かった。すると全裸のおじさんを前にローズが黙りこくっている。あまりに気の毒な光景で、たまらず割って入った。 「お客様! どうなさいましたでしょうか?」 「部屋の鍵閉めといたのにこのババアが入ってきたんだよ」 「そうでしたか、大変失礼いたしました。帰りに返金をさせていただきますので、一旦この場をお納めいただけませんか?」 「ちっ、ちゃんとしろよ」

間違えたわけじゃないのか?

客が大きな音を立てて扉を閉めると、ローズは「間違えてあけちゃったんだよね! あと1時間頑張ろう!」と笑って304号室の扉の向こうに消えていった。その足取りは少し不安定で、掃除用具が入ったバケツを持つ手は震えていた。そんな彼女を少し不憫に思いながら自分の担当する部屋に戻って数十分、また3階から怒鳴り声が聞こえてきた。 「おい兄ちゃんさ、このババアまた部屋開けてきたんだけど! なんなんだよ!」 ローズはまた黙ってうつむいている。だが、どうやら間違えて開けたわけじゃないのは雰囲気から伝わってきた。「上の者を呼べ」という全裸の客をなだめながらフロントに連絡。ほどなくして飛んできた会社の専務が何とかその場を収めてくれ、その日は帰路についた。その日、専務に何時間も叱られたローズは段々と無断欠勤が増え、数か月もすると完全に出勤しなくなって連絡もつかなくなってしまった。そして入れ替わるようにフロントに現れたのは数人の警察官だった。
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警察がきた“まさかの理由”
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小説家を夢見た結果、ライターになってしまった零細個人事業主。小説よりルポやエッセイが得意。年に数回誰かが壊滅的な不幸に見舞われる瞬間に遭遇し、自身も実家が全焼したり会社が倒産したりと災難多数。不幸を不幸のまま終わらせないために文章を書いています。X:@Nulls48807788
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