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DeNA“312億赤字”から“157億黒字”へ。V字決算の立役者「ポケポケ」人気爆発を生んだ多角化戦略

多角化戦略が奏功、DeNAの経営体制はどう変わった?

 DeNAはもともと、モバイル向けゲームプラットフォームの「モバゲー」で一世を風靡した企業として知られています。しかし、スマホアプリの競争が激化する中で、新作ゲームのヒットを連発することが難しくなり、業績が伸び悩む時期が長らく続きました。その間、他社との協業やライセンス供与で一定の収益を確保しつつ、スポーツ事業への投資を強化してきたのです。  横浜DeNAベイスターズの買収や球場運営の工夫は、当初は「本当に採算が合うのか」と疑問視する声もありました。しかし、ファンサービスの強化やチーム自体の戦力アップにより、観客動員数を着実に増やし、今では安定収益を生む大きな柱へと成長しました。また、IT企業としての強みを生かし、球場内でのキャッシュレス決済導入やデータ分析を使った選手のコンディション管理など、多面的な取り組みが功を奏しています。  さらに、DeNAはAI・ヘルスケア領域にも積極投資を行っています。具体的には、高齢化社会に対応したオンライン診療や健康管理サービス、ビッグデータを活用した広告配信やマーケティング支援など、ゲームとは異なる分野での成長を模索してきました。こうした多角化戦略は一朝一夕に結果が出るものではありませんが、コロナ禍を経て社会のデジタル化ニーズが一段と高まったことで、一部事業が追い風を受けています。  今回の決算で大きく注目されたのは、やはりポケモンという世界的IPを使った大ヒットゲームが生まれたことです。しかし、それは単なる「運が良かった」という話ではなく、長らく蓄積してきたスマホゲーム開発・運営ノウハウ、そしてパートナー企業との密接な連携があってこそ成し遂げられた成果でもあります。「ポケポケ」以外にも、DeNAが今後リリースを予定しているタイトルや、新たに立ち上げるスポーツ関連サービスなど、多角化戦略に基づく成長ストーリーには引き続き期待が寄せられるところです。

今後の見通しとリスクは?

 DeNAが手掛ける新規事業(ヘルスケアやAI、モビリティ関連など)は、まだ大きな収益源とはなっていませんが、ゲームやスポーツで得た資金をこうした新分野に再投資し、中長期的な柱を育てたい狙いがあると考えられます。  足もとでは、株価が急騰したことで割高感を指摘する声もあるかもしれません。短期的には利益確定の売りが出る可能性も否定できませんが、決算の数字自体がアナリスト予想を大幅に上回っていたことを踏まえると、一定の評価は妥当と見る向きが多いようです。今後は、DeNA自身が中期経営計画などを通じて、どのように成長戦略を描くのか、具体的なロードマップを示すことが期待されます。  いずれにしろ、株価の急騰が一時的な熱狂に終わるのか、それとも堅調な業績と将来性の裏付けがあるのか。これからの展開には注意が必要ですが、一連の決算発表と株価急上昇は、DeNAの底力と今後への期待感を改めて市場に示したことは間違いありません。ポケモンカードゲームをデジタルで楽しめる「ポケポケ」と、コロナ後の盛り上がりを見せるプロ野球界を背景に、DeNAが次にどんな一手を打つのか。投資家だけでなく、ゲームファンやスポーツファンにとっても、目が離せない存在になりそうです。<文/鈴木林太郎>
金融ライター、個人投資家。資産運用とアーティスト作品の収集がライフワーク。どちらも長期投資を前提に、成長していく過程を眺めるのがモットー。 米国株投資がメインなので、主に米国経済や米国企業の最新情報のお届けを心掛けています。Webメディアを中心に米国株にまつわる記事の執筆多数 X(旧ツイッター):@usjp_economist
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