ニュース

DeNA“312億赤字”から“157億黒字”へ。V字決算の立役者「ポケポケ」人気爆発を生んだ多角化戦略

アナリスト予想を大きく上回った最終損益

 2月7日に発表された決算内容に戻ると、最終損益が157億円の黒字でした。この数字がいかに大きなサプライズだったかは、アナリスト予想の平均値との比較でわかります。QUICKコンセンサス(4社ベース、1月23日時点)によれば、当時のアナリスト予想平均は65億円の黒字程度でした。実際にはその倍以上の黒字幅を叩き出しており、市場にとって「これは予想外の好決算だ」というインパクトが強かったわけです。  この予想を大きく上回った背景には、先述したように「ポケポケ」のヒットによるゲーム事業の収益貢献が大きいとされていますが、スポーツ事業やその他の事業にもコスト削減や構造改革の成果が出てきていると考えられます。DeNAは近年、モバゲーなど従来のソーシャルゲームやプラットフォームに偏重しすぎないよう、多角化戦略を進めてきました。AI・ヘルスケア分野への投資やモビリティへのチャレンジなど、さまざまな領域で新しい収益の芽を育てています。こうした取り組みが徐々に花開きつつあるといえるでしょう。

売上収益1167億円、12%増のワケ

 決算発表資料によると、DeNA全体の売上高に相当する売上収益は1167億円で、前年同期比12%増という結果になりました。新型コロナウイルス感染症拡大の影響が徐々に緩和され、消費活動が回復に向かう中で、ゲーム事業やスポーツ事業が効率的に収益を伸ばしたという構図です。  特に、スマホゲーム市場はコロナバブルがひと段落したと言われる反面、質の高いタイトルはしっかりとユーザーを掴んでいる状況があります。ポケモンという世界的なIPを用いた「ポケポケ」のような作品は、その人気が一時的なブームで終わりにくく、長期的にファンをつなぎとめる可能性が高い点が強みです。イベントやアップデート次第で売上を積み上げていける点も大きいでしょう。  さらに、コロナ禍で打撃を受けていたプロ野球の観客動員ビジネスが回復傾向にあり、ベイスターズの主催試合の売上が拡大したことも、DeNAの全体収益を底上げした一因とみられています。複数の好材料が同時に揃ったことで、ここまでの増収増益を実現できたというわけです。
次のページ
多角化戦略が奏功、DeNAの経営体制はどう変わった?
1
2
3
4
金融ライター、個人投資家。資産運用とアーティスト作品の収集がライフワーク。どちらも長期投資を前提に、成長していく過程を眺めるのがモットー。 米国株投資がメインなので、主に米国経済や米国企業の最新情報のお届けを心掛けています。Webメディアを中心に米国株にまつわる記事の執筆多数 X(旧ツイッター):@usjp_economist

記事一覧へ
【関連キーワードから記事を探す】