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DeNA“312億赤字”から“157億黒字”へ。V字決算の立役者「ポケポケ」人気爆発を生んだ多角化戦略

ゲーム事業、29%増収で505億円を達成

ポケポケ では具体的に、どの程度の売上増をもたらしたのでしょうか。DeNAの発表によれば、今回の2024年4~12月期決算におけるゲーム事業の売上収益は505億円と、前年同期比で29%増を達成。セグメント利益(営業利益に相当する業績指標)は210億円と公表されました。この数字は、かつての主力プラットフォーム「モバゲー」などが伸び悩んでいた時期を考えると、久々に大ヒット作が出たといえる好成績です。  昨今のスマホゲーム市場は成熟化が進んでおり、新規タイトルのヒットが難しくなっていると言われがちです。そのため、アナリストの多くは「DeNAが新たなビッグタイトルを作るのは容易ではない」と見ていました。しかし、実際にはポケモンという世界規模のIP(知的財産)を巧みに活用し、トレーディングカードゲームという定番ジャンルにアプリ開発で参入することで、スマホゲームに飽きが来たユーザー層や、かつてのポケモンファンを再び取り込むことに成功したのです。  また、ガチャ依存型の集金システムではなく、カードパックの形式をとることで、ユーザーとしても「コレクションする楽しみ」が増加。これはリアルカードゲームの醍醐味をそのままデジタルに持ち込んだ格好で、「必ずしも強力なカードだけを求めるのではなく、推しポケモンやレアリティなどを楽しむ」という幅広い遊び方を可能にしています。SNS上で「今日は○○のカードを引いた!」と自慢する投稿が頻繁に見られるのも、この仕組みがユーザー心理にマッチしている証拠でしょう。

スポーツ事業も大幅増益、ベイスターズの観客動員好調

 ゲーム事業の好調ぶりが目立ちますが、DeNAの決算を支えるのはそれだけではありません。2024年4~12月期の連結決算発表によると、スポーツ事業でも前年同期比+11.8%となる売上収益264億5000万円を達成しています。具体的には、横浜DeNAベイスターズの主催試合で観客動員数が拡大したことが大きな要因です。  プロ野球界全体がコロナ禍からの回復傾向にあり、球場の入場制限が緩和された影響も見逃せません。横浜スタジアムに足を運ぶファンが着実に増え、飲食やグッズ販売、関連イベントなども盛り上がりを見せました。DeNAはIT企業としてのノウハウをスポーツ興行に活かし、座席チケットのデジタル販売や公式アプリでの映像配信、さらにはNFTを活用して選手の名シーンをコレクションするサービスなど、さまざまな試みを行っています。  その結果、ベイスターズのファンクラブ会員数や観客動員数、球団関連のグッズ売上も右肩上がりとなり、スポーツ事業全体の収益が底上げされた形です。投資家やアナリストの間では「DeNAがベイスターズを買収した当初は採算面で懸念されていたが、今では事業の大きな柱になっている」との見方が増えてきました。複数の収益源を持つことで業績の安定化が進む点は、DeNAにとって大きな強みといえるでしょう。
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アナリスト予想を大きく上回った最終損
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金融ライター、個人投資家。資産運用とアーティスト作品の収集がライフワーク。どちらも長期投資を前提に、成長していく過程を眺めるのがモットー。 米国株投資がメインなので、主に米国経済や米国企業の最新情報のお届けを心掛けています。Webメディアを中心に米国株にまつわる記事の執筆多数 X(旧ツイッター):@usjp_economist

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