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生活保護家庭で母は薬物依存症。中学2年生から働くことを強要され、高校に行けなかった21歳男性の叫び

 高校授業料無償化が進められるなか、忘れてはいけない存在がいる。本人の意思とは裏腹に「中卒」にならざるを得なかった子どもたちだ。教育の機会を奪われた子どもの過酷な生い立ちと厳しい現実に迫った。

高校進学率99%の時代でも「親が進学を許さなかった」

[教育を奪われた]子どもの肖像

写真はイメージです

 高校進学が当たり前の時代になって久しい。文部科学省の「学校基本調査」(令和2年度)によると、中学校卒業者の高校等進学率は98.8%。  だが、ごくわずかながら、高校進学を断念し、本人が望まずに最終学歴が「中卒」になった若者は存在する。 「街を歩く高校生が視界に入ると『楽しそうでずるいな。俺だって制服を着たかった』って何度もねたんできた。でも、もう戻れないから」  こう明かす神奈川県出身の畠山海斗さん(仮名・21歳)は、まさに当事者の一人だ。

暴力を振るわれながら14歳から強制労働

 3人きょうだいの末っ子として母子家庭に生まれたが、その時点で母親は生活保護受給者なうえに、薬物依存症だったという。3きょうだいは日常的に殴られ、心と体がボロボロになりながら育った。 「児童相談所に入ることも多くて、そのたびに学校を休むことに。中2で家に戻ってやっと学校に通えると思ったら、母親に働くことを強要されました。母親は知り合いが社長をしていた電気関係の会社に俺を送り込んで、『仕事場では18歳って言え』って。ひたすら電柱工事をしていて、雨の日以外は無休なのに、俺の手取りは10万円以下。結局、給料のほとんどは勝手に母親のもとに送られてたんです」  海斗さんはその後も働き詰めで、学校は不登校扱い。そのまま、本来であれば進路に悩むはずの中3に進級した。
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21歳にして400万円以上を母親に無心されてきた
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