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「人生詰んだ!」34歳で介護離職、12年後に見つけた新しい人生。岩手から東京への“遠距離介護”で見えた希望

介護離職を勧めないが、ポジティブな視点も

介護離職について工藤氏はこう語る。 「企業講演では『介護離職はやめましょう』と言います。会社側の立場もあるから。でも、本では50代で誰もが直面し得る現実を書きました。僕のようなキャリアチェンジは誰にでも起こり得る。役職定年で疲弊するより、早めに備えるべきです。離職は勧めませんが、あれがなければ疲れ果てたサラリーマンだったと思うと、ポジティブな転機だったと感じます」

介護を人生の再設計と捉え、備える

工藤氏の12年は、介護が人生を壊すものではなく、新たな道を切り開くきっかけになり得ることを教えてくれる。2度の離職で味わった絶望は、ブログや出版で社会に還元され、妻と母を支える現在の生活に繋がった。 「介護は突然来る。でも、人生を詰ませるものじゃなく、可能性を開くチャンスにもなる。僕はあの経験で、自分らしい生き方を見つけたんです」 そんな工藤氏は具体的な準備を提案する。 「例えば、親が元気なうちに介護保険や地域サービスを調べ、信頼できる専門家と繋がっておく。それだけで選択肢が広がります。プロの手を借り、自分らしいバランスを見つけて欲しい」 介護をポジティブな転機と捉え、未来に備える姿勢は、誰もが学びたい視点だ。工藤氏の物語は、個人の葛藤を超え、社会全体に希望を与える。
工藤 広伸

工藤 広伸・著 PHP研究所

<取材・文/田口ゆう>
立教大学卒経済学部経営学科卒。「あいである広場」の編集長兼ライターとして、主に介護・障害福祉・医療・少数民族など、社会的マイノリティの当事者・支援者の取材記事を執筆。現在、介護・福祉メディアで連載や集英社オンラインに寄稿している。X(旧ツイッター):@Thepowerofdive1
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