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選択的夫婦別姓で日本はどう変わるのか?「子どもの約50%が反対」専門家が“杜撰な法案”の危険性と指摘するワケ

子どもの約50%が夫婦別姓に反対

令和7(2025)年1月1日に公開された、産経新聞による小中学生2000人を対象とした調査 では、「反対」が49.4%、「親が決めたなら賛成」が18.8%、「賛成」が16.4%、「わからない」が15.4%で、約半数の子どもが反対している。

産経新聞による、小中学生2000人を対象とした「選択的夫婦別姓」に関する調査

子どもたちからは、「両親の離婚への不安」や「兄弟姉妹で異なる名字になるのは嫌だ」といった声が上がっている。 家族としての一体感を保てるのか、いじめ問題に発展しないかはセンシティブな問題だ。 「今、ただでさえ、日本は少子高齢化しています。立憲民主党案は、肝心な子どもたちの問題は後回しにした杜撰な案です。私は婚姻率・出生率の低下につながると懸念しています」 2023年の日本の合計特殊出生率は1.20で、1947年の統計開始以降で過去最低を記録した。また、2024年の出生数は72万988人で、1899年の統計開始以降で過去最少となった。 ただでさえ、婚姻率が低下している今、子どもの氏の問題が関わると、より結婚へのハードルが高くなるのではないか。 「子どもが夫婦どちらの姓がいいかなんて、姓名判断にでも頼るしかないんじゃないでしょうか」と岩本氏は、苦笑いした。

日本の制度は時代遅れなのか

岩本拓也弁護士

なぜ、国民の約半数が反対している夫婦別姓制度が、導入されようとしているのか。 「主に、推進しているのは、立憲民主党・共産党・公明党などですが、自民党も一枚岩ではありません。日本維新の会は反対しています。国民民主党は、慎重な立場を取っています。賛成派は、同性婚や国際結婚など、ごく少数の人たちにとって不便で不利益があると言います。だけど、制度設計というのは、多数派の意見を元にしなければ、混乱します。多数派に焦点を当てた制度設計が民主主義の根幹です」 日本の制度は時代遅れだという意見もある。海外の事例をご紹介する。 夫婦別姓を選べる国は多いが、逆に夫婦別姓が強制される国もある。日本の別姓案は、「例外のない自由な選択性」という意味で、スウェーデンに似ている。しかし、「福祉国家」のイメージの強いスウェーデンでは、事実婚や同棲が多く、離婚率は5割を超えている(日本は2023年度で約39% )。 大半がヒンズー教徒のインドや、慣習法の国のジャマイカは夫婦同姓だ。しかし、夫・妻のどちらの姓にもできる日本と違い、妻が夫に合わせる形での同姓で、子どもは夫(父親)の姓を継ぐ。キリスト教国のイタリアでは、夫は元々の姓を使い、妻は結合姓(自分の姓と夫の姓を結合させる)を使うのが原則。アルゼンチンも同様だが、旧姓の通称使用も認められている。ドイツは、1993年に夫婦別姓を許容したが、原則は同姓で、別姓にするには、役所への申告が必要だ。韓国は儒教の影響で、妻は夫の姓を名乗れない。イギリス・アメリカでは、妻が夫の姓を名乗る同姓夫婦が圧倒的に多い。ベルギー・ポーランドでは、子は父親の姓を名乗ることになっている。日本が時代遅れとも言えない。 「夫婦と家族の姓は、それぞれの国の伝統や家族観により異なります。賛成派は、家制度による呪縛だと主張しますが、それは極論です。また、スウェーデンの事例などには言及しませんよね」と岩本氏は指摘する。 今国会の会期は、2025年1月24日から6月22日までだが、一番に影響を受ける子の福祉を優先した、慎重な議論が望まれる。 <取材・文/田口ゆう>
立教大学卒経済学部経営学科卒。「あいである広場」の編集長兼ライターとして、主に介護・障害福祉・医療・少数民族など、社会的マイノリティの当事者・支援者の取材記事を執筆。現在、介護・福祉メディアで連載や集英社オンラインに寄稿している。X(旧ツイッター):@Thepowerofdive1
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