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東電株主総会 実は「怒号ときどき爆笑」【後編】

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 お次は動議。質疑応答ですでに2時間を費やしていたところで、勝俣会長が「議案の審議に入りたい」と発言。「取締役17名選任の件」(1号議案)、「監査役2名選任の件」(2号議案)、「株主402名の提案に伴う定款一部変更の件」(3号議案)の決議が残っていたのだが……ひと際通る声で動議を求める株主が現れる。

「まず、勝俣さんともあろう方が、自分の解任決議とってますけど、本来なら清水さん(社長)や別の方が決議するべきでしょう。もう一度、解任動議を取り直して頂きたい」

 この株主、かなり総会に“慣れた”様子。「議長、ちゃんと議事進行しなさいよ」と、ヤジを制止できない勝俣会長を批判しつつ、自ら「うるさい! 動議が先やろ!」とヤジを飛ばし続ける株主を叱りつける場面もあったのだ。そんなコワモテの株主が、妙な演技力を発揮し、涙声でもう1つの動議を提案した。

「あのね、もう(株主総会が始まってから)3時間半経ってるんですよ。3時間半経っとるからですね、ヒジョーっに、お腹が空いてきたんですよ。のども渇いてきたので、この際、1時間の休憩を求める!」

 爆笑とともに湧き上がる満場の拍手。東電本社3階に用意された記者室では、「おお!」と唸る記者の姿も。結局、動議はこれまた勝俣会長によりスピード否決されたが、今日一番の拍手を浴びた株主となったのだ。

 このほかにも「東電役員室のエアコンは何度に設定されているんですか?」なんて素朴な質問も飛び出し、6時間の持久戦は見る人を飽きさせることなく閉幕。

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6時間9分にわたる”マラソン総会”が閉幕した後も、壇上前で声高に東電の責任を追及する株主がいた。その株主の様子を見守るために、多数の株主がなかなか席を立たなかったという

「着席する前にお辞儀したっきり、役員は座ったままで、まったく謝罪の意識が感じられなかった」(東電株を保有しながら、一部空売りして30万円ほど稼いだ30代・会社員)

「私たちも言ってみれば原発事故の被害者ですよ。老後のために株を買ったのに400万円も損しているんですから……。謝罪の気持ちも見えなければ、少しも明るい見通しが見えてこないんですから、ひどい総会でした」(2年前に東電株を購入した60代・主婦)

 このように役員陣の対応を非難する声が多く聞かれたが、「あの勝俣さんって大したものね。いじめられっ子みたいで、逆に同情しちゃったわ」(初めて株主総会に参加したという50代・主婦)と、一部の株主の心は掴んでいたようだ。

「古い原発から順に停止・廃炉とする」「原発の新設・増設は行わない」ことを定款に盛り込むべきとする、402人の株主が提案した3号議案もあっさり反対多数で否決した東電に対して、「当初の予定より1時間、総会が延びたようだが、終始、平身低頭しながら怒号とヤジをかわす東電の進行の巧さが光った」(大手紙経済部記者)と評価する声もあったのは事実。

 追及する株主に、見事にかわす東電、そして笑いを誘う質問の数々……下手なバラエティ番組よりも見ごたえたっぷりの総会だったのだ。

取材・文/池垣完

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