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「○○だからデフレ」論を喝破する【三橋貴明×飯田泰之】Vol.2

【短期集中連載】三橋貴明×飯田泰之対談 [日本は成長できる!]Vol.2 経済評論家で作家の三橋貴明氏とエコノミストの飯田泰之氏。具体的な政策提案に違いはあれど、共通するのは「脱デフレ以外の経済成長なし」、そして「日本は成長できる!」という点だ。日刊SPA!では、「短期集中連載」として三橋貴明氏と飯田泰之氏による過激な経済対談を5回にわたってお届けする。 ⇒Vol.1『 「日本ダメ論」を唱える“インテリ様”のメンタリティ』
https://nikkan-spa.jp/289111
飯田: 日本で財政破綻が起きる起きると言うけれど、まず、そんなことは起きません。しかし、万が一仮に、本当に財政状況が悪くなったとして起きるのは、デフォルトではなくインフレです。大体、7~8%か、もう少し高いインフレになるでしょう。7~8%のインフレはいいことではないと思うけれど、財政破綻論の人、またはそれに乗っかっている人が思っている破綻と、全然、違う。恐らく、彼らがイメージしている財政破綻国家って、街中にホームレスが溢れ、ともすると暴動の機運も巻き起こって……という荒廃した社会ですよね。きっと(笑)。
三橋貴明氏,飯田泰之氏

三橋貴明氏(写真左)と飯田泰之氏(写真右)

三橋: 真逆ですよね。だって、インフレ率7~8%になれば、企業がめちゃくちゃ儲かるから、どんどん人雇う(笑)。そうなったら、そうなったで、それこそ増税をして公共事業を削ればいい。日銀が通貨回収して、金利を引き上げる。そういう当たり前の政策をとればいいだけの話。ところが彼らは、「脱デフレ!」と言うと、「必ずハイパーインフレが起きたらどうするんだ!」と言い出す。こいつら本当にバカじゃないの?と思うのですが、ハイパーインフレとは物価の上昇率が年率1万3000%ですから、そんなことにはならないし、いや、むしろなってくれとすら思いますよ。 飯田: ハイパーインフレが起きる国って2つだけなんですよね。通貨発行主体の継続性が疑われた場合――たとえば外国に占領されるんじゃないかという場合と、すでに占領されちゃった場合。つまり、国が崩壊する、革命、戦争という状況下に起こりえるもの。 三橋: 歴史的にみても、フランス革命時とか、第一次大戦後にフランス軍にルール地方を占領されたドイツ、ソ連赤軍とナチスが血みどろの戦いをしたハンガリーとかですよね。 飯田: その第一次世界大戦後のドイツのインフレって、あるタイミングでいきなり収まるんです。それは何かというと、「財政に対しての上限ルールが決まる」こと。具体的に言うと、オーストリアのインフレはサンジェルマン条約での賠償金支払い方法が妥結し、天文学的数字になるのではないかと言われていた賠償額に上限が設けられるという報道で収まったんです。ニュースが出た瞬間に止まるんです。仮に、日銀がお札刷りすぎて――絶対にそんなことにはならないですけど、ハイパーインフレになったとしても、「財政で支える総額はいくらまでにします」と言えば、ピタリととまる。本当に「ハイパーインフレ」危惧は、夢想ですよ。まあ、それで財政破綻論のウソ臭さから出てきたのが、人口減少論でしょうね。まあ、向こうは燃料に事欠きませんから。 三橋: 人口減少論もバカげていますよね。ロシアは日本よりはるかに速いペースで人口が減っているのに、インフレ率プラス10%くらいで悩んでるし、やはり人口が減っているドイツも金融政策がまともに機能してインフレ率2.5%。それらをどう説明するのか?と。反証したらあっという間にボロが出る話ばかりで、どうせなら、もっと手ごたえのある反論を出してきてほしいですよ。 飯田: 人口が減っているからデフレだというけれど、普通はインフレになりますからね。 三橋: 生産人口が減ると、供給能力が減りインフレになる……のに、「生産人口が減るからデフレです」ってマジで言っている人を見たことがありますよ、私。 飯田: なんていうか彼らには、物価や景気って崇高な何かで金融政策で左右できないという信念があるんですよ。たぶん。もちろん、金融政策で完璧にコントロールができるとは言わないけれども、確実に言えるのは、金融政策によって景気回復の足を引っ張ることは簡単にできるということ。 三橋: 例えば「財政破綻するからデフレです」論、つまり白川理論ですが、どこに「日本が財政破綻するから、消費を増やせないわ」って思っている国民がいるんだと。我々は所得が減っているから、消費しないだけですよ。デフレによって、確かに物価は下がりますが、それ以上に所得が落ちる。そしてだんだん貧しくなるからカネを使わない。カネを使わないからますますデフレという悪循環に入っているだけ。 飯田: さらに言うと貯蓄率も下がっています。ここまで苦しいと貯蓄なんてしていられない。それだけなのに、なんか、いろいろ理屈をつけてくるんですよ。貯めるカネもなく、使うカネもないという話。 ⇒Vol.3『何もしないのが“正解”の官僚仕事』に続く
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【飯田泰之】 飯田泰之いいだやすゆき●1975年、東京都生まれ。東京大学経済学部卒業、同大学大学院博士課程単位取得中退。駒澤大学経済学部准教授。著書に『脱貧困の経済学』(共著・ちくま文庫)、『ゼロから学ぶ経済政策 日本を幸福にする経済政策のつくり方』 (角川oneテーマ21) 『世界一シンプルな経済入門 経済は損得で理解しろ! 』(エンターブレイン) 【三橋貴明】 みつはしたかあき●1969年、熊本県生まれ。1994年、東京都立大学経済学部卒業(現:首都大学東京)。2008年に中小企業診断士として独立し、現在は作家、経済評論家としても活動している。著書に『崩壊する世界 繁栄する日本』『マスゴミ崩壊』『4万2246票』『国民の教養』(以上、扶桑社)、『コレキヨの恋文』(小学館)、『悲観論に踊らされるな! ニッポン経済集中講義』(技術評論社) <構成/鈴木靖子>
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