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「世界を旅して花嫁を探す」――46歳のバツイチおじさんは英語も喋れないのに本気でそう思い立った 〈第2話〉

突然、嫁さんにフラれて独身になったTVディレクター。御年、46歳。英語もロクにしゃべれない彼が選んだ道は、新たな花嫁を探す世界一周旅行だった――。当サイトにて、2015年から約4年にわたり人気連載として大いに注目を集めた「英語力ゼロのバツいちおじさんが挑む世界一周花嫁探しの旅」がこの度、単行本化される。本連載では描き切れなかった結末まで、余すことなく一冊にまとめたという。その偉業を祝し、連載第1回目からの全文再配信を決定。第1回からプレイバックする!  *  *  *  英語も喋れないのにたった一人で世界一周の旅に出る「46歳のバツイチおじさん」によるズンドコ旅行記が今回からスタート。日刊SPA!では、この模様を連載形式でお届けしていきます。前篇に続き今回も、旅のイントロダクションとして、「なぜ46歳のおじさんが仕事を辞めてまで世界一周の旅に出ようと思ったか」をお送りします。 世界一周花嫁探しの旅【第2話 46歳のおじさんが世界一周の旅へ出る理由(後篇)】 妻からの突然の三行半。 離婚のショックから抜け出せず、創作意欲も湧かなくなり、 俺は窮地に陥った。 テレビマンというアイデンティティを失いかけていた頃、 俺は俺のために俺にまつわる取材を始めた。 「俺を、漢字一文字で表すと何?」 俺は真剣だった。 相手の迷惑も顧みず、カメラを片手に、時には友人のオフィスにお邪魔して とにかく「俺を漢字一文字で表してほしい」とお願いしまくった。 友達の一人は戸惑いながらも「時」と答えた。 どうやら時間の感覚が人と違うらしい。 高校時代のバスケ部の得意技もフェイク。時を操ろうとしていたようだ。 仕事で五日間平気で徹夜とかするし、酒を飲み出したら異常に長い。 みんなが帰る瞬間に「から揚げもう一個!」って頼むらしい。 仕事仲間の一人は「渦」と答えた。 いろんなプロジェクトで、いつも、すごい流れの渦の真ん中に投げ込まれて、 阿鼻叫喚しながら仕事をしているイメージがあるとのこと。 プロデューサーとしてはまとめるのが大変みたい。 妻が家を出る日、同じ質問を尋ねた。 俺「俺を漢字一文字で例えると」 妻「何、それ?」 俺「いや、セルフポートレート作ってるの」 妻「……」 妻は明らかにあきれている。 俺「で、何?」 妻「……ーん」 妻は深く考え込む。 俺はそれをじっと観察する。 そして俺は、その様子を一眼レフで撮影し始める。 それを見て、さらにあきれる妻。 妻「…『奇』かな」 俺「え? 奇人の『奇』?」 妻「うん」 俺「……実は、俺が親父を漢字一文字で表すなら、『奇』なんだよ。……同じだ。遺伝って怖いな。やっぱ、奇人と住むの大変だよね。やっぱ」 妻「……そうだね」 俺「だよね。奇人の『奇』か。そうだよね。大変だよね、うん」 妻「でも、あなたの『奇』は奇跡の『奇』だよ。あなたまた、奇跡を起こすかもしれないじゃん。今まで何回も奇跡起こしてきてるし」 優しく笑う妻。 俺「……俺のこういうとこが、ダメなんだよな」 妻「うん、そうだね」 妻はまた、優しく微笑んだ。 そして、涙をこらえ、目を腫らし、家を出て行った。 ドアの閉まる音が聞こえた。 茫然自失。 何も考えられなかった。 妻のいない部屋は静かだった。 その夜、映画「奇人たちの晩餐会」を観た。 涙が溢れてきた。 「……俺だって、好きで奇人やってるわけじゃないんだよな」 後藤隆一郎 奇人には奇人ならではの悩みがある。 45歳の奇人は傷ついた。 人の気持ちがわからない奇人。 思いやりのない奇人。 キチガイという言葉に酔っていた奇人。 一ヶ月間、鬱状態が続いた。 いわゆる「どん底で、落とし穴ドッキリにひっかかった状態」が続いた。 飯を食う元気もない。 無気力。 人生なんてどうでもいい。 あぼーーーーーーーーーーん。 奇人は10キロ痩せた。 そんな時、座右の銘であるあの言葉が浮かんできた。 それはホワイトブッダの言葉。 不良に落ちぶれ、どん底に落ちた三井寿を救った言葉。 「あきらめたらそこで試合終了ですよ」 そう、「スラムダンク」ファンが大好物なあの名言。 高校時代はバスケ部。大分県で準優勝。 膝の靭帯を切りながら最後まであきらめなかった。 だが、奇人は気づいた。恋愛においてそれは…… 「あきらめなかったらそれはストーカーですよ」 になる。 「どうする?」 「どうすればいい?」 「どうすれば…」 「どうすれば…」 奇人は知恵を絞った。 「俺はだれだ? 俺は奇人。俺は奇人」 奇人なら奇人なりの行動があるはずだ。 「もう、俺にはこれしか残ってね~よ」 奇人は奇をてらう行動に出た。 「世界一周しながら嫁さんを探してやる!」 ということで、世界一周することにしてみた。 嫁への想いを断ち切るため、新しい何かを求めて。 人の心がわかる人間になるため! 「自分の中の何かを変えるんだ!」 生まれつき奇人なんだから、そこを否定してもしょうがない。 短所は長所だ。 傷心の奇人のおじさんは10月17日に誕生日を迎え46歳になった。 これから、おじさんの冒険旅行が始まる。 無計画、行きあたりばったり。 体力的にも最後の年齢。果たしてどうなることやら……。 あ、ちなみに英語はほんとに一切しゃべれません! 次回予告 「興味ないと思うけど、おじさんによる旅への整理整頓編」を乞うご期待!
1969年大分県生まれ。明治大学卒業後、IVSテレビ制作(株)のADとして日本テレビ「天才たけしの元気が出るテレビ!」の制作に参加。続いて「ザ!鉄腕!DASH!!」(日本テレビ)の立ち上げメンバーとなり、その後フリーのディレクターとして「ザ!世界仰天ニュース」(日本テレビ)「トリビアの泉」(フジテレビ)をチーフディレクターとして制作。2008年に映像制作会社「株式会社イマジネーション」を創設し、「マツケンサンバⅡ」のブレーン、「学べる!ニュースショー!」(テレビ朝日)「政治家と話そう」(Google)など数々の作品を手掛ける。離婚をきっかけにディレクターを休業し、世界一周に挑戦。その様子を「日刊SPA!」にて連載し人気を博した。現在は、映像制作だけでなく、YouTuber、ラジオ出演など、出演者としても多岐に渡り活動中。Youtubuチャンネル「Enjoy on the Earth 〜地球の遊び方〜」運営中
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