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35歳が分岐点[人生をこじらせた男たち]

◆青春回顧⇒人生まとめ⇒自己完結の順で男は狂う!?
阿部真大氏

阿部真大氏

 男も35歳ともなると、仕事でもある程度責任のある立場になり、結婚や子供の誕生といった人生の次のステップを歩み……と、言いたいところだが、中には次のステップへと踏み出せずに迷走し始める男性も少なくない。  今までまったく興味のなかった束モノアイドルにハマり始めて「青春を取り戻してるんだ」と言いだす人。『魔法少女まどか☆マギカ』などの大人向け深夜アニメにハマる人。あまつさえアニメのストーリーを引き合いに「『まどマギ』は、結局、人は絆なしには生きていけないんだってことを教えてくれるよね」などと、酔っぱらいながら人生論を語る人……。読者諸兄の周りにこんな男性はいないだろうか? はたまた、自分自身、身に覚えがあったりはしないだろうか? 狂っているとまでは言わないが、ハタから見ると何だか「人生をこじらせている」ように見えるのも事実。とりわけ女性からは「アイドルにハマって青春をやり直してるつもりか知らないけど、振り返っている暇があったら前を見ろ」「アニメで人生語られても……」と、手厳しい意見が。果たしてこのままでいいのか……そこで、35歳を境に訪れる男の迷走は何が原因なのか、社会学者の阿部真大氏に話を聞いた。 「まず、上記のような迷走を始めるのは、カネと時間に余裕のある独身男性や、DINKSに多いですよね。30代後半になると男性の婚姻件数は激減しますし、配偶者が同世代であれば出産も年々難しくなっていく。『俺はもう一生結婚できないかもしれない』『もう子供を持つことはない』という不安や諦めを打ち消すために、青春を振り返ったり、人生論を語ったりして自己肯定へと繫げているのでは?」  でも、今ほどではなくても、結婚していなかったり子供がいなかったりという男性は昔から少なからずいたはずだが……。 「ひと昔前なら、結婚していなくても、子供がいなくても、男は仕事さえ頑張っていれば、社会的に承認されていた。“会社”というコミュニティが男性のアイデンティティを支えていたのです。でも、今や会社というコミュニティそのものが希薄になっている。仕事が男性のアイデンティティを支えてはくれなくなったことが、迷走を生む一番の原因なのかもしれません」  さらに、彼らの迷走には段階があると阿部氏は指摘する。 「35歳前後で自分の社会的な立場を俯瞰して、不安や諦めを覚えた男性がまず最初にするのは、“青春回顧”による今までの人生の肯定。アイドルにハマる人、毎年フジロックに行って青春期の思い出の曲を堪能する人、プラトニックラブや男子会に目覚める人などが当てはまります。次の段階が、肯定した人生を総括して語りだす“人生のまとめ”。深夜アニメで人生を熱く語ったり、SNSでやたら自分語りをする人が当てはまります」  まとめ終わったらもうやることがない気がするが……。 「そのうえで、一生ひとりで生きていこうと覚悟した男性は“SEXよりもオナニー”と言いだしたり、収入に不相応な都心のタワーマンションに住んで“自分の城”づくりに腐心したりと“自己完結”したライフスタイルを確立し始めます。このままじゃいけない、新しく社会との関わりを見いださねばと一念発起する人もいますね。でも、突然右傾化して排外主義的なことを主張し始めたりと“次のステップがズレてる”場合もあるので、なかなか前途多難です」 【阿部真大氏】 社会学者。東京大学博士課程修了後、甲南大学講師を務める。著書に『合コンの社会学』『居場所の社会学』などがある ― 35歳が分岐点[人生をこじらせた男たち]の共通点【1】 ―
合コンの社会学

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