早稲田大学でパチンコ授業の謎
早稲田大学でパチンコに関する講義が行われている!?
まさかパチンコの勝ち方を教えているわけでもなかろうし、パチンコを中心とした経済学でもやっているのか?と思い、その講義に行ってみた。
すると、行われていたのは、そんな予想のはるか斜め上を行く、「祈りの現場としてのパチンコ屋」というタイトルの講義。いったい何事だ!?
これは早稲田大学文化構想学部で行われている「祈りのメンタリティ」という講座の一環で、さまざまなジャンルの学者、有識者が「祈り」をテーマに講義をしているものの1コマ。パチンコのことばかり教えているわけでは決してなく、学生によれば、美学や宗教学などの先生も講義をしているらしい。
では、祈りとパチンコがどう関係あるのか?
この通年講座のうち、3コマ分を担当しているのは諏訪東京理科大の篠原菊紀教授。脳神経学のジャンルで広く知られているが、パチンコの「海物語」の魚群リーチが出たときに、パチンコを打っている人たちの脳波はどうなっているか、などの「パチンコと脳波」についての研究でも有名な人物だ。
そんな篠原教授が、深く親交のあるパチンコライターのウエノミツアキ氏に白羽の矢を立てた。ウエノ氏が「パチンコと祈り」について講義し、そしてそのときの脳波活動について篠原教授が解説する、という世にも奇妙な「パチンコと祈りと脳活動」に関して考察するオモシロ講義が出来上がったのだ。
ウエノミツアキ氏による講義は2回。1回目は「パチンコ屋がなぜ、祈りの場として機能しているのか」を座学し、2回目は元『パチンコ必勝ガイド』編集長の大崎一万発氏をゲストに迎えて篠原教授と鼎談する、という形式で進められたが、本稿では2回分の概要をまとめて紹介する。
◆「魚群リーチ」を神格化するメンタリティ
パチンコには、リーチ演出(大当たり予告)が存在するが、もっとも有名なのは「海物語」の「魚群リーチ」である。リーチがかかったあとに、右から左へ大量の小魚がサーッと流れるこの演出は、信頼度(実際に当たるかどうかの確率。このリーチ演出が出たからといって、必ず大当たりするわけではない)が50%。 信頼度50%というのは、脳科学的にも「もっとも気持ちよくなる確率」だと証明されているという。 脳科学的には、まずリーチ演出が発生した段階で、脳波が強く反応する。これは大当たりの予測によって発生するもので、実際の大当たり、または外れ(報酬、と呼ばれる)まで、脳波はある程度強い反応(快感増幅)を継続するが、確率が50%のときに、その数値が最大化するという。 どうしても用語が難しくなってしまうが、要は「当たるか外れるか、半々の確率」というときにもっとも脳みそは気持ちよくなっている、ということだ。 (実は右から左に流れる、というアクション自体も脳科学的に人気が出た理由と分析されているのだが、若干ややこしい話になるので割愛する) で、ここからがウエノ氏の「極論」。 パチンコでリーチアクションが発生すれば、人々は「当たれ!」と祈る。それが信頼度50%であれば、「伸るか反るか」であり、実際に当たると「軽いキセキ感」を得ることになる。結果、魚群を「大当たりの預言者」として神格化し、当たると救済感覚すら得るようになる。 さらに、パチンコ好きの人々、特に海物語が好きな人々は隣の台が当たっても喜ぶ。これはもはや隣人愛(アガペー)である。 もし、宗教を「祈りの繰り返しで癒しや安堵を得られる場」と仮定するならば、パチンコ屋ではまったく同じ行為が繰り広げられており、パチンコ屋はすでに宗教の場であり、さらには日本人の大半が無宗教でいられるのは、パチンコ屋が存在するからではないだろうか。◆大崎氏の異論。「パチンコ屋での祈りは自己神格化のためにある」
ウエノ氏自らも「極論」と呼ぶ上記の説には、学生からも異論が出た。特に議論が沸騰したのは、「パチンコ屋での祈り、とウエノ氏が呼ぶものは、大当たりを得たいという利己的な欲求から発しており、祈りではなく願いと呼ぶべきではないか」という、哲学的な「祈りなのか願いなのか」論争。祈りというものは、神や他者などのために捧げられる見返りを期待しないものではないか、という意見である。 これに対し、大崎一万発氏は、「祈りでも願いでもどっちでもいいけど、僕がパチンコ屋で祈る対象は、自分。自分だから当てられる、玉を出せるという自己神格化をするために祈っている」と持論を展開していた。 以上、駆け足に今回の講義の要旨を解説してみたが、実際の講義では要所要所で、篠原氏による脳科学的な解説が入り、非常にアカデミックな内容であった。事前のアンケートによると約100人の学生のうち、80%がパチンコ未経験という状況ではあったが、大崎氏が現状のパチンコ業界に関して丁寧に説明を加え、「別に皆さんにパチンコをやりましょう、と勧めるわけでは決してありませんが、パチンコ業界というのはもろもろの問題も抱えつつ、日本にしかない特殊な業態。なぜ日本にはパチンコが定着したのか、またときにバッシングを受けたりするのか、を考えてみることで日本という社会が見えてくることもあるのでは?」と語っていたのが印象的だった。【後日談】
さて、今回の講義は「パチンコは祈れば当たる」などといったオカルトなことを教えていたわけでは決してない。だが、かつてはパチンコを打っていたが、あまりに負けるのでパチンコ屋から足が遠のいていた筆者は、今回の講義を聞いてどうにもこうにも打ちたくなってしまい、打ち上げの席でウエノ氏から「今、パチンコで面白いのは『XFILES』という台」という話を聞きだした。 そこで、フラリとパチンコ屋に足を運んでみたところ、なんと92連荘するという奇跡が発生! 大当たりの最中、ずっと「この連荘が閉店まで続け!!」と祈り続けてしまいましたとさ。 取材・文/織田曜一郎(本誌)
『パチンコ必勝ガイド SPECIAL 2011年 08月号』 緊急特集「浜崎あゆみ物語〜序章〜」 |
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