雑学

トイレでできたズボンの股間のシミ…どう対処する?

週刊SPA!連載「ドン・キホーテのピアス」<文/鴻上尚史> ―

トイレ, 残念な人, 男の生態 先日、テレビ番組の収録の直前、トイレに入りました。立ったまま、小をしているとそこに、知人が入ってきました。「やあやあ」「どうもどうも」と出しながら会話が弾みました。それが間違いのもとでした。

 僕は、なんとなく出し終わったと思って、ナニをしまいました。会話に気を取られて、自分の身体の声を無視してしまったのです。

 終わったと思った小は、終わっていませんでした。身体と会話しなかった罰が私を襲いました。

 どんな罰か? 男なら分かりますね。そうです。パンツの中にしまわれたナニから、チョロチョロと、「まだ終わってないよ~」と自己主張の声が聞こえたのです。

 何気ない日常で、厚手のデニムでもはいていたらなんとかなります。けれど、その日、僕はテレビ番組収録の直前、薄手のクリーム色のズボンをはいていました。そう、最悪の悲劇が起こったのです!

 ナニからチョロチョロと出た液体がズボンの上に「どうだ! これが私の存在証明だあ! この世に残した私の生きざまだあ!」とくっきりと主張したのです。

 この時、男はたいてい、軽いパニックに陥ります。

 よくやるパターンは、いきなり、手洗い場に行って、バシャバシャと水をズボンの股間の部分にかけて

「いやあ、手洗ってたら、水がはじいちゃって」と言い訳をするのです。

 けれど、それを聞いた民衆は「ほんとかあ? それ、おしっこだろ? おしっこに水かけてごまかしてるだろ?」と疑惑の目を向けるのです。

 それでも、小学生時代なら、この「毒を食らわば皿まで作戦」はなんとか有効かもしれません。

 中学・高校だと「ズボンのお尻が破れたと言って、体育ジャージを吐く作戦」も有効でしょう。

 が、その時、僕はテレビ番組の収録直前だったのです。カメラに映った瞬間「いやあ、手洗ってたら水がはじいちゃって」なんて言えるわけないのです。いえ、もし言ったら、尿疑惑としてヤフーのニュースになるかもしれません。

「体育ジャージに着替えました」も、意味ないでしょう。大人になると、普通、体育ジャージは持ち運ばないのです。

◆股間にできたシミとの仁義なき戦い

 さて、股間にくっきりと現れた液体性のシミに対して、私はどう戦ったか? 世の男性たちよ。よく聞いて欲しい。今回の原稿は、男性に生きる知恵を伝えるための文章なのだ。

 じつは、私がテレビにチョロチョロと出始めて約30年、股間のシミに苦しめられるのは、二回目なのだ。

 一度目は10年近く前だろうか。その時は、本当に私は途方に暮れた。途方に暮れて、このまま逃げようかと思った。けれど、そんなことをしたら、大騒ぎになる。テレビ業界から追放になるかもしれない。後々、逃げた理由が「ズボンにおしっこのシミがついたから」だと分かったら、追い払われた上に笑われるだろう。

 トイレの個室に座って絶望した私は、いきなり、トイレットペーパーを両手で引き出した。

 そして、ズボンを下ろし、トイレットペーパーをズボンの表と裏からシミの部分に強く当てた。トイレットペーパーを両手に持ちギュッギュッと表裏の両側から押し当てたのだ。

 今から思うと何故、そんなことをしたのか理由が分からない。もちろん、勝算があったわけではない。ただ、何かがこうしろと私の脳髄に語りかけたのだ。トイレの神様かもしれない。

 1分間も押しつけていただろうか。ゆっくりとトイレットペーパーを外すと、なんと、股間のシミはほとんど目立たないほどに薄くなっていたのだ! ありがとう、ありがとう、トイレの神様!

 ひとつのシミをやっつければ、次のシミへ。5分ほど格闘した結果、ズボンの股間はなんと、なんでもない股間へと戻っていたのだ!

 男たちよ。どんなに絶望的な状況でも、道は開かれる。希望はある。人生の大切な教訓を残して、私は筆を置く。あ、パソコンだった。パソコンはなんて言うんだ?

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