幼稚園・小学校での昔話の改変は是か非か――浦島太郎が5人、カニが殺されない「さるかに合戦」
「ずる賢い猿に騙されて死んでしまうカニ」「意地悪な継母に虐げられるヘンゼルとグレーテル」など、昔話や童話のなかには、ときに残酷な描写を交えることで効果的に寓意を伝えようとする作品も多い。子供心に残酷な描写が怖かったからこそ、『人を欺くと必ず自分に返ってくる』などの教訓を学んだという人も多いだろう。
しかし、昨今の教育現場において教えられる昔話や童話では、こうした残酷描写が省かれたり、内容が改変されることが多いという。
「学芸会で浦島太郎をやることになったのですが、浦島太郎の希望者が多かったので浦島太郎は5人。乙姫様の家来役のお母さんから『女性同士で優劣があるように見えると子供が傷つくんじゃないか』という意見があったので、家来の役をなくして乙姫様は10人にしました」(保育士)
「『さるかに合戦』では、猿がカニを殺すシーンが残酷すぎるということで、猿が謝ってカニと和解する、武力行使のない話に改変して教えています」(小学校教員)
「『花咲かじいさん』で、誰も悪者の役をやらなくて済むように、悪いおじいさんの役をなくし、犬も殺されない話にしました」(小学校教員)
「『悪の登場する物語に触れると善悪の区別がつかなくなる』と懸念しているんだとしたら、バカげた話ですよね」と嘆息するのは、独身・子ナシ女性の立場から育児にまつわる様々な問題に斬り込む漫画「いくもん!」を週刊SPA!で連載中の漫画家・中村珍氏。
「そもそも『浦島太郎』の原作では(何通りかありますが)、浦島は乙姫様とセックス三昧の生活を送っています。子供に教える際にはダイレクトな性描写を避けようと、改変は今に始まったことではありませんが、浦島太郎が5人に乙姫様が10人じゃ、とんだ乱交パーティです」(中村氏)
残酷描写や刺激的な描写を避けようと改変したつもりが、ただのトンチキ話になってしまっていては、むしろ子供の情操教育には悪影響を与えかねない。昔話や童話の持つ、本来の寓意について考えたうえで、本当に改変が必要なのかどうか判断したほうがよいのかもしれない。 <取材・文/牧野早菜生>
※現在発売中の「いくもん!1」には、「残酷な昔話は子供に悪影響を与える有害図書だ」という教育現場の懸念を踏まえた、中村氏による渾身の「無菌図書・桃太郎」を収録。下記から試し読みもできる
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『いくもん!』 中村珍が「カヤの外から」問答し、舌鋒鋭く斬り込む |
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