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井上尚弥の快進撃は「ボクシング黄金時代」の再来を予感させる

「流行は繰り返される」という。確かに我々が幼少期にハヤっていた事象&アイテムが、あるものはかたちを変え、またあるものはそのままのかたちで注目されている。そこで、再ブレイクの仕組みとその魅力を紐解いてみた! ◆ボクシング黄金時代の再来を予感させる井上尚弥の快進撃 真っすぐに生きる。 ここ最近、テレビ業界はこぞってボクシングの中継に積極的だ。それは辰吉丈一郎や鬼塚勝也が国民的なスター選手だった’90年代を彷彿とさせるボクシング黄金期の再来さえ予感させている。  大きな分岐点は’12年のロンドン五輪だった。ミドル級の村田諒太が日本史上48年ぶりの金メダルを獲得。さらに清水聡もバンタム級で銅メダルを獲得し、ボクシングはロンドン五輪で「最もブレイクした競技」と認知された。  ここへ注目したメディアに、K-1やPRIDEの時代が終焉を迎え、新たな格闘技コンテンツを探していたフジテレビがあった。村田をプロ転向に口説き落とす一方で、「かつてない怪物」として将来を有望視されていた井上尚弥の試合を、ノンタイトル戦からゴールデンタイムに放送するなど、大々的なコンテンツ改革を行った。この動きに、TBSや日本テレビ、テレビ東京など、ライバル局も触発され、ボクシングへの肩入れ度は、マスメディア全体で急激に高まって現在に至るのだ。  全日本ボクシング協会の大橋秀行会長は言う。 「K-1やPRIDEがムーブメントを起こした20年間、劣等感と憧れの両方を感じていたのがボクシング界でした。当時は、多くのジムが強い選手を育て、興行で収益を上げる方針から、女性や子供、中高年への普及に軌道修正し、それもさまざまな成功を収めていたんです。しかし今はかつての興行路線も盛り上がりつつあります。K-1の栄枯盛衰も教訓になっていますから、今のボクシング・ブームには安定感があるんですよ」  大みそかにも、ボクシング中継が根付き始めているが、同会長は「次の段階として、年間に行われる試合のクライマックス・マッチが大みそかに行われる世界観が欲しい」と野心を燃やす。特に軽量級では、ボクシング界が今や日本主導で回っており、日本人好みのマッチメークが実現しやすいのも追い風だろう。  そんな折の4月6日。大田区総合体育館で、井上が日本史上最短(男子)となるプロ6戦目で世界王座を奪取。減量苦の井上は階級転向を示唆する一方で「次の階級では具志堅用高さんの持つ世界王座の日本最多防衛記録(13回)を超えたい」とも語った。デビュー前から、将来の対決が期待されていた大阪のアイドル、井岡一翔や世界の怪物、ローマン・ゴンサレスとの対決も待ち遠しいところだ。  ボクシングは一過性のブームを再燃させるというより、もっと長期的で深みのある文化の構築にヒートアップを続けているのかもしれない。 【善理俊哉氏】 スポーツ・海外情報ライター。格闘技専門誌での連載に『村田諒太、黄金の問題児』などがある。構成に携わった井上尚弥と父・真吾氏の往復書簡『真っすぐに生きる。』が発売 取材・文/古澤誠一郎 田幸和歌子 福田フクスケ 廣野順子(オフィスチタン) 安田はつね(本誌) ― ’80~’90年代[懐かしのブーム]が再熱する理由【8】 ―
真っすぐに生きる。

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