スバル渾身の「レヴォーグ」は欧州車に勝てるか?【後編】
―[道路交通ジャーナリスト清水草一]―
世界のガソリンエンジン技術の主流であるダウンサイジング直噴ターボ。独メーカーを中心に、同分野で先行する欧州勢に対抗すべく、ついに日本の零戦(?)“レヴォーグ”が完成! そんなレヴォーグに、我々は“レガシィの後継車”としてではなく、国産初の本格的ダウンサイジング直噴ターボ車として注目。本場のそれと対決させてみました
MJブロンディ=文 Text by Shimizu Souichi
佐藤靖彦=撮影 Photographs by Yasuhiko Satou
◆スバル渾身の“零戦エンジン”搭載 レヴォーグは欧州車に勝てる?
⇒【前編】はコチラ
ヨーイ、ドン!
出足からボルボがリード! そのまま差を広げてゴール! ぐおおおお、スバル破れたり!
車重はレヴォーグのほうが100kg重く、パワーも10馬力低い。負けは仕方ないが、それにしてもかなりの差がついた。原因は主にターボのレスポンス。ボルボ等欧州車のダウンサイジングターボは、アクセルを踏んだ瞬間からほとんどタイムラグなくターボが効いて、まるで大排気量エンジンのようにグイグイ加速するが、レヴォーグのそれは一拍遅れる。出足の一瞬の差が、どんどん広がってしまうのである。
では燃費はどうか。御殿場周辺の一般道を10kmばかり軽く流して、燃費計で計測してみた。
レヴォーグ/リッター12.6km
V40/リッター12.8km
こちらはほぼ互角、誤差の範囲内だった。V40がハイオク仕様のFF車、レヴォーグはレギュラーガソリン仕様(2.0リッターモデルはハイオク仕様)で、しかも燃費に不利なフルタイム4WDであることを考えると、勝ったとすら言える。
総合的には、スバルの技術はまだ欧州レベルには達していないが、実際に乗ったフィーリングは優秀だ。エンジンは滑らかでパワーも十分。厳密に比べなければ粗は見えない。クルマ自体のデキもいい。国内で使うにはサイズ的にちょうどよく、スバルらしく作りがしっかりしている。
が、負けは負け。そのあたりをスバルのエンジニアに質すと、「ターボのレスポンス向上は非常に難しい技術の集積です。我々も全力を尽くしましたが、そうですか、まだ負けてますか……」と沈痛な面持ちで語ってくれた。
その意気やよし。いつか追いつき追い越す日が必ず来るだろう。敬礼!
【結論】
思えば日本人は追い付き追い越せが最も得意な民族。すでに勝利は見えたとも言える。零戦に搭載された「栄」エンジンを開発した中島飛行機。その流れを汲む富士重工業の技術力に期待しようではないか!万歳三唱!
―[道路交通ジャーナリスト清水草一]―
1962年東京生まれ。慶大法卒。編集者を経てフリーライター。『そのフェラーリください!!』をはじめとするお笑いフェラーリ文学のほか、『首都高速の謎』『高速道路の謎』などの著作で道路交通ジャーナリストとしても活動中
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