雑学

元WWEスーパースターFUNAKIのプロレス・セミナーに潜入!――「フミ斎藤のプロレス講座」第19回

FUNAKI選手近影

FUNAKI選手近影

 元WWEスーパースター、FUNAKIのサイコロジー・セミナーに潜入した。といっても、いったいなんのことかよくわからないかもしれない。わかりやすくいえば、元WWEスーパースターのFUNAKIがプロ選手を対象として開講したプロレス・セミナー=サイコロジー編である。

 サイコロジーPsychologyとは心理学、(個人・集団の)心理、心理状態、人の心理を理解する力のことだが、プロレス用語でサイコロジーというと“プロレスラー”と“観客”のコミュニケーション、“リング上”と“観客席”の対話といった意味になる。プロレスラーと観客のコミュニケーションには、基本的にはコトバによる会話ではなく、非言語コミュニケーションNonverbal Communication(言語以外の手段によるコミュニケーション)が用いられる。

 非言語コミュニケーションは体の動き(身ぶり・手ぶり)、顔の表情、視線、相手との距離の置き方などを使ってメッセージ(感情・意思)を伝達するコミュニケーション方法で、人間は日常生活のなかで、コトバによるコミュニケーションと同じくらい、この非言語コミュニケーションを使っている。

 FUNAKI(本名・船木勝一)は1968年(昭和43年)、東京・葛飾区生まれ。アニマル浜口道場のインストラクターからプロフェッショナル・レスリング藤原組に入門し、93年(平成5年)12月、デビュー。その後、格闘探偵団バトラーツ、みちのくプロレスを経て、98年(平成10月)3月に渡米し、TAKAみちのく、ディック東郷、MEN’SテイオーとのユニットKAIENTAIとしてメジャー団体WWEと契約した。

 WWEには98年から2010年(平成22年)まで13年間在籍。アメリカのグリーンカード(永住権)を取得し、現在は自宅のあるテキサス州サンアントニオでレスリング・スクール“FUNAKI DOJO”を経営しながらWWEのタレント・スカウトとして活動しているが、現役選手としてリングに上がることもある。今回の特別セミナーは「WWEで学んだリング・サイコロジーを日本の若い選手たちに教えたい」というFUNAKIのかねてからの希望をFUNAKIのまな弟子にあたる日高郁人(ZERO1)がかなえたもので、プロ選手のみを対象とした“非公開”のセミナーは東京・竹芝のZERO1道場でおこなわれた。

 セミナーに参加したのはZERO1所属の若手、インディー系団体で活動している新人ら計8選手。サイコロジーのレクチャーといっても学校の授業のようなことをするわけではなくて、講義内容そのものはやっぱりリングを使った練習だった。

「フィジカルphysicalだけど、サイコロジカルpsychologicalなんです」

 これまでの21年の現役生活のうちの16年以上をアメリカで過ごしてきたFUNAKIの言語感覚はすでにアメリカ人のそれになっているのかもしれない。ちょっとややこしいかもしれないが、「フィジカルだけどサイコロジカル」というのは、「体の動きが心の動きを伝える」というふうに理解するとわかりやすい。

“受講生たち”はすでにプロとして観客のまえで試合をしている選手たちだから、講義内容はカーディオ系(コンディショニング)の理論や練習方法ではなく、じっさいのリング上の動き=試合を想定したものだった。

“ローリング”と呼ばれる――柔道の前方回転受け身とはやや異なる――プロレス式の受け身は(1)左ヒザ(左の大腿部)を抱え込んでの前方回転と(2)右ヒザ(右の大腿部)を抱え込んでの前方回転のバリエーション。柔道の前方回転受け身ができるだけ体をちいさくして回るものだとすると、プロレスのローリングはアゴを上げて、大きく回転するのが基本。プロレスの場合は、受け身を取ったら取りっぱなし、投げられたら投げられっぱなしではなくて、すぐに起き上がって相手が立っている方向に体と顔を向きなおす。起き上がるときは、ヒップを使って左方向にツイストし、すばやく立ちあがるのがポイントだ。

「(投げられるほうは)飛ばなくていい。ただアゴを上げるだけでいい」

「フェイス・ジ・オポーネントFace the opponent(対戦相手の方を見ること)。寝ていてはダメ。すぐに立ちあがって次の動きにいけるポジションをつくる」

 プロレスのリングは正方形だけれど「動きはつねに対角線を意識すること」「対角線ではじまり、対角線で終わること」。対角線を意識するというのはどういうことかというと、ローリング(受け身)を取って、くるっと立ちあがったとき、すぐに“回れ右”(じっさいは回れ左)をして最初に立っていたコーナーのターンバックルの方向にむかって構えるようなイメージなのだという。

「リングのまんなかcenter。つねにリングのまんなかで(試合を)やることを意識して。お金を払ったお客さんはレスリングを観たいわけでしょ。お客さんはまんなかでやってるところを観たいんです。まんなかでやるとお客さん、観てるほうは安心する。安心できるものを見せてあげるんです」

「なんでこうなるのか、というところを絶対に見せなければならない。これが基本。(相手の)手首を取ったら、手首を取っているところをきっちりとお客さんに見せるんです」

⇒【後編】に続く https://nikkan-spa.jp/763897

文責/斎藤文彦 イラスト/おはつ

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※このコラムは毎週更新します。次回は、12月17~18日頃に掲載予定!


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